肝臓
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総説
少ない介入で作製するメタボリックシンドローム関連肝疾患モデル動物のヒト病態解析への有用性
常山 幸一
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2018 年 59 巻 2 号 p. 92-101

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抄録

メタボリックシンドローム(MS)を背景に発症する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は,肝硬変~肝細胞癌(HCC)に進展する難治性疾患であり,病態解明と治療法の開発が急がれている.現在NASHモデル動物として,レプチン欠損マウス(ob/obマウス)などの単一遺伝子変異・改変動物や,メチオニン-コリン欠乏食など特殊な飼料で誘発されるモデル動物,あるいはストレプトゾトシン投与後に高脂肪食で飼育するSTAMマウスなど種々の方法で作成されたモデル動物が用いられている.これらのモデル動物はいずれもMSやNASHの病態の一面を反映しており,病態解析に大きく寄与していることは疑いないが,それぞれにヒトのNASHとは異なる面も併せ持っている.ヒトのNASHは個人差が大きい多様な背景因子を有する疾患であり,その病態を完全に模倣するモデル動物の作成は不可能なことから,目的に応じてそれぞれに長所・短所がある病態モデル動物を使い分ける必要があると考えられる.本稿では,遺伝子改変操作や特定の栄養素が欠損した飼料を用いず,少ない介入によって作成され,病理組織学的にもヒトのMS,NASH,HCCに類似した所見を示す新しいMS関連肝疾患モデル動物を紹介する.ヒトNASH患者の背景病変や臨床経過は多様であり,個々の症例により病態の重篤度や治療歴も異なることから,病態解析や治療法の開発には,目的に応じた動物モデルをうまく使い分け,それらの知見を集積することが必要である.

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© 2018 一般社団法人 日本肝臓学会
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