症例は66歳の男性.2011年に住民検診で血小板減少を指摘され当院を受診し,B型肝硬変と診断され核酸アナログによる治療を開始した.2013年6月には肝S8に肝細胞癌(HCC)を指摘され,計4回のラジオ波焼灼療法(RFA)を施行したが2015年6月に再発を認め,RFAでの病変制御は困難と判断した.再発病変に対して陽子線治療を行い,治療終了時には腫瘍は退縮していたが,治療終了後6カ月で照射野内に再発し,2回目の陽子線治療を行った.治療終了時には腫瘍は退縮し,治療終了後13カ月の時点で再発を認めず病変のコントロールは良好である.2回の陽子線治療中,治療後とも重篤な合併症なく経過した.HCCに対して複数回の陽子線照射を行った報告は少なく,現時点では重篤な晩期合併症はないものの,今後も注意深い経過観察が必要である.