肝臓
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症例報告
多発肝細胞癌・腸骨転移に対し放射線照射・肝動脈化学塞栓術・sorafenib内服を組み合わせた集学的治療を行い長期寛解が得られた1例
若林 俊一山崎 智生城下 智黒住 昌弘杉浦 亜弓藤森 尚之柴田 壮一郎市川 雪森田 進小松 通治梅村 武司松本 晶博田中 榮司
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2018 年 59 巻 2 号 p. 117-124

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抄録

症例は70歳代の男性.特記すべき既往歴はなく,飲酒歴もなかった.X-1年5月より腰痛を自覚していたが改善がなく,X年3月に整形外科にて施行した腰部MRIにて左腸骨に腫瘍性病変を認めた.同部位の骨腫瘍生検では肝細胞癌の骨転移と考えられ,当科を受診した.造影CTでは,肝両葉に多発する腫瘤性病変と,左腸骨には動脈早期相で濃染を呈する転移性病変を認め,多発肝細胞癌・腸骨転移と診断した.骨転移巣への放射線照射の後,肝内最大病変と左腸骨病変に対して肝動脈化学塞栓術(TACE)を施行した.7月よりsorafenib 400 mg/日を開始し,8月と12月に肝内残存・再発病変に対してTACEを追加した.その後,sorafenib 200 mg/日の内服を継続し,4年間以上寛解状態を維持している.肝細胞癌骨転移例の予後は一般に不良であるが,集学的治療を行うことにより長期生存を得られる可能性があると考えられた.

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© 2018 一般社団法人 日本肝臓学会
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