1980 年 21 巻 12 号 p. 1637-1646
3'-Me-DAB飼育ラットのある時期に抗AFP抗体を投与することにより,肝癌の発生および増殖を著明に抑制することを教室の佐藤が報告した.そこで著者は,その効果の機序を明らかにする目的で,抗AFP抗体投与ラットにおける肝のAFP産生細胞の変化,および投与された抗体の組織内局在について酵素抗体法を用いて検討した.その結果,3'-Me-DAB飼育の4週目に抗AFP特異抗体を投与した群において肝組織におけるAFP陽性細胞が著明に減少すること,しかも投与された抗体グロブリンが肝のある種の細胞に局在することを明らかにした.この成績より,投与された抗体と組織内のAFPとが細胞を場として免疫反応を起こしている可能性が強く考えられ,それが抗体による腫瘍抑制効果の機序の一因であることが示唆された.索引用語:α-fetoprotein AFP 3'-Me-DAB抗AFP抗体 酵素抗体法