肝臓
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劇症肝炎急性期の腹腔鏡検査-内視鏡所見と肝生検組織所見による予後推定-
香川 博幸小田 隆俊亀田 幸男中島 紘北井 明西内 明子瀬尾 敬進士 義剛青木 栄三郎西窪 健次興梠 隆
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1983 年 24 巻 1 号 p. 35-46

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抄録

劇症肝炎の急性期すなわち昏睡期(5例)あるいは前昏睡期(1例)に腹腔鏡検査および直視下肝生検を施行した6症例について本検査の診断的意義と安全性を検討した.腹腔鏡的に肝萎縮が高度で肝生検でも広汎壊死を認めた3例は全例検査後9日目までに死亡したのに対し肝萎縮の軽度であった3例中2例は救命し得た.死亡した他の1例は壊死性膵炎が主な死因であって,この合併症も腹腔鏡で生前診断可能であった.肝生検標本から算定した肝細胞容積比は腹腔鏡的に肝萎縮高度の3例いずれも10%以下であるのに対し肝萎縮軽度で胆汁色に染まる残存肝実質を充分量認識し得る3例ではそれぞれ40(膵炎合併死亡例),45, 70%と明らかな差を認めた.検査後に処置を要するような大出血その他の偶発症は生じなかった.熟練した術者がICU管理のもとで施行するなどの充分の注意を払えば,腹腔鏡検査は劇症肝炎急性期の予後推定と合併症の診断に有用であった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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