肝臓
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肝細胞癌の病理形態学的研究
肝内門脈の腫瘍塞栓について
自見 厚郎
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1983 年 24 巻 6 号 p. 641-647

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抄録

肝細胞癌の95剖検例中,肉眼的に68例(71.6%)に,組織学的に75例(78.9%)に門脈腫瘍塞栓が認められた.腫瘍塞栓は,増殖する腫瘍組織と壊死組織の構成比率から,増殖型(35例),壊死型(14例),混合型(21例),器質化型(5例)の4型に分類され,このうち増殖型が最も多い.腫瘍塞栓が肝内門脈の副血行路にまで増殖・伸展している進行肝癌では,グリソン鞘は大部分腫瘍組織に占拠され,肝動脈も巻き込まれ,ときに動脈瘤形成,その破綻による動脈-腫瘍血管-門脈の異常短絡路形成が認められる.陳旧化すると腫瘍塞栓に器質化がみられるが,subendothelial spaceにおける膠原線維の増加,栄養動脈周囲または中心壊死巣の周囲の結合組織の増殖などの形態がとられている.腫瘍塞栓の器質化,異常A-P shuntの形成などは,肝癌における門脈圧亢進に関与しており,治療による生存期間の延長が期待される.今後,食道静脈瘤破綻が直接の死因となっている肝癌症例の増加が予想される.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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