肝臓
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献血を契機に発見された無症候性Wilson病の1例
林 久男福井 和彦村上 博栗木 潤介各務 伸一佐藤 祐造花市 敬正
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1983 年 24 巻 6 号 p. 654-658

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抄録

16歳の男子高校生が献血時GOT, GPTの高値を指摘された.精査の結果,この慢性肝障害は血清銅低値,低セルロプラスミン血症,尿中銅排泄の亢進を伴つていた.しかしKayser Fleischer輪や錐体外路症状は認めなかった.肝の線維化は軽微で脂肪変性とpiece meal necrosisを伴う慢性肝炎像を示した.グ鞘周辺部の一部の肝細胞に銅含有顆粒がみられた.肝の銅含有量は1,025μg/g乾燥重量と著増していた.無症候性のwilson症と診断しペニシラミン治療を開始した.献血を契機に診断された早期のWilson病を報告したが,国民が健康診断などで肝機能検査を受ける機会が増えており,その異常者に対し,特に30歳以下で脂肪肝や慢性肝炎が疑われる症例では本症をも念頭におくことが大切である.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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