肝臓
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急性A型肝炎に筋由来酵素の上昇を認めた1例
有高 知樹佐田 通夫丸山 直人瀬戸山 浩中嶋 文行前山 豊明安部 弘彦谷川 久一坂本 博章
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1983 年 24 巻 6 号 p. 659-663

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抄録

筋組織障害を合併した急性A型肝炎の1例を経験した.34歳の男性で,発熱と四肢筋痛を初発症状として著明なtransaminase, LDHの上昇を認めた.IgM抗HAV抗体の検索よりA型肝炎と診断した.入院時より筋由来酵素であるCPK, Aldolase,尿中Creatineの上昇を認めtransaminaseの推移と一致して正常化した.発症2週目の肝生検組織像は,GOT, LDHの著明な上昇を認めたにもかかわらず,肝細胞壊死,細胞浸潤の程度は軽微であった.血中免疫複合体の推移をRaji細胞法を用いIgA, M, Gの型別に検討した.各型の免疫複合体は有意の高値を示したが,病初期にはIgA型及びIgM型の免疫複合体の高値が見られ,通常の経過を取る急性A型肝炎に比べて長く血中に存在する傾向が認められた.本症例における筋組織障害がこれらの免疫複合体と密接な関係を持った可能性が考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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