肝臓
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比較的高齢者においてIgM型HA抗体陽性にてA型劇症肝炎と診断し,救命し得た1例
小林 明文坪水 義夫村瀬 永策藤田 安幸中神 誠一藤田 力也菅田 文夫
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1985 年 26 巻 8 号 p. 1072-1076

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抄録

われわれは53歳という比較的高齢者においてIgM型HA抗体が陽性を示した劇症肝炎で救命し得た1例を経験した.症例は男性であり,感冒様症状後トランスアミナーゼ,ビリルビンの増加後III度の昏睡にて入院した.入院後Plasma exchange, THF,ラクチュロース等による治療をおこない,約7病日後に意識は正常レベルとなった.本症はIgM型HA抗体が発病後約50日目でも陽性であった.入院後30病日目の組織所見では肝線維症の状態であった.劇症肝炎は高齢者では一般的に予後が非常に悪いと言われている.われわれの調べた範囲では50歳以上のA型劇症肝炎例は本症を加え5例目であり,その内4例は生存例である.A型劇症肝炎は劇症肝炎の中では比較的予後が良いものと考えられる.これらの諸問題につき文献的考察を加え報告する.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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