肝臓
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急性肝不全における血清および脳脊髄液中の中分子量物質の測定とその臨床的意義に関する研究
特に脳浮腫発生機序との関連について
杉原 潤一斎藤 公志郎冨田 栄一武藤 泰敏
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1988 年 29 巻 9 号 p. 1181-1193

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抄録

急性肝不全患者血清中には,in vitroにおいてラット脳ミクロゾーム分画のNa+, K+ATPase活性を阻害する因子が存在し,その分子サイズはゲルクロマトグラフィー上,約2,000~4,600(中分子量物質)と推定された.さらに高速液体クロマトグラフィーにて,急性肝不全患者の血清および脳脊髄液中には中分子量物質(分子量約4,000以下)のピークの著明な増加が認められ,昏睡度の進行と並行して増加し,脳浮腫合併例では非合併例に比し有意に高値を示した.これらの中分子量物質はプロトロンビン時間やヘパプラスチンテストと負の,血漿遊離メチオニンや芳香族アミノ酸濃度と正の相関がみられ,急性肝不全の病態と密接に関連して変動した.以上の結果より,急性肝不全患者の血清および脳脊髄液中で増加を示した中分子量物質は肝性脳症と深い関連がみられ,一部の分画は細胞膜のsodium pumpの障害を介して脳浮腫の発生に関連している可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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