肝臓
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高濃度エタノールの肝毒性
アルコール性肝障害の発生機序に関する検討
竹井 謙之佐藤 信紘川野 淳松村 高勝吉原 治正肱岡 泰三江口 寛鎌田 武信
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1988 年 29 巻 9 号 p. 1202-1207

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抄録

高濃度エタノールの肝機能,特に肝の酸素消費と胆汁分泌に与える影響をラット灌流肝を用いて検討し,以下の成績を得た.
エタノールを5mMから500mMまで段階的に増加させて添加すると,
1) 5mMと50mMのエタノール添加時には酸素消費の増加がみられたが,胆汁流量や肝組織中のアデニンヌクレオタイドにはほとんど変化がみられなかった.
2) 添加エタノールを100mMから200mM, 500mMと増加させると濃度依存性に酸素消費と胆汁流量の低下がみられ,肝ミトコンドリアの呼吸鎖チトクローム成分の還元化が認められた.また肝組織中のATP量の低下,ADP, AMP量の増加がみられ,肝エネルギーチャージの低下は胆汁流量の低下と有意な正の相関関係(r=0.86, p<0.01)を有していた.
以上より,高濃度エタノールが肝ミトコンドリア機能を抑制して肝機能障害をもたらすことが明らかとなり,アルコール性肝障害の発生,進展の一因と考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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