肝臓
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経過中劇症化し肝不全で死亡した自己免疫性肝炎の2症例
中野 善之古田 清土屋 公明宜保 行雄袖山 健清沢 研道古田 精市三浦 正澄
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1988 年 29 巻 9 号 p. 1253-1258

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抄録

自己免疫性肝炎の経過中劇症化し,死亡した2症例について報告する.症例1は,42歳女性.昭和60年4月,黄疸,全身倦怠感および発熱が出現.高度の肝機能異常と高γ-グロプリン血症(4.4g/dl)と肝性昏睡を認めた.抗核抗体,抗DNA抗体および抗平滑筋抗体は陽性で,LE細胞現象も陽性であった.ステロイド療法,グルカゴンインスリン療法および血漿交換療法を施行したが,肝機能は急速に増悪し肝不全にて死亡した.症例2は46歳女性.昭和60年2月,全身倦怠感,黄疸が出現.T. Bilの著しい高値,トロンボテスト値5%,高γ-グロブリン血症(3.2g/dl)と腹水が認められた.抗核抗体および抗平滑筋抗体は陽性で,LE testは陰性であった.ステロイド療法,グルカゴンインスリン療法を施行したが肝不全は進行し死亡した.いずれの症例も,肝炎ウイルス,アルコールおよび薬剤の関与は否定的で,自己免疫性肝炎の経過中劇症化した稀な症例と考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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