肝臓
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癌化した真性肝嚢胞の1切除例
鹿嶋 秋五浅沼 義博丹羽 誠小山 研二
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1988 年 29 巻 9 号 p. 1265-1268

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抄録

62歳の女性が腹部膨満感を主訴に来院し,CTで肝左葉の巨大な真性肝嚢胞を認め,その一部の癌化を疑って開腹した.嚢胞壁の術中組織診により癌化の確診を得て肝左葉切除を施行した.嚢胞壁には4×3×3cmの主腫瘤1個と米粒大の小結節が多数認められ,組織学的にはいずれも高分化型腺癌であった.嚢胞壁には異型性をもつ部分ともたない部分があり,主腫瘤と小結節の間にも異型性のない上皮が認められ,嚢胞壁からの多中心性発癌が示唆された.患者は,癌性腹膜炎にて術後10ヵ月で死亡したが,その原因は術中の嚢胞内容の腹腔内散布によるものと推測された.真性肝嚢胞の手術に際しては,常にその癌化を念頭におき,嚢胞内容を散布することなく吸引排除し内腔を観察し,必要があれば迅速組織診を行う.癌化が確診された場合や強く疑われた場合は嚢胞も含めた肝葉切除が必要である.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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