肝臓
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B型肝炎ウイルス(HBV)感染肝細胞障害過程における肝門脈域CD4/CD8細胞比,肝実質域CD8/CD5細胞比に関する検討
佐多 斉銭谷 幹男坂口 正巳奥山 早苗河辺 朋信根岸 正史宮崎 寛出浦 正倫大越 裕文安藤 秀樹清水 能一亀田 治男田中 貢
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1990 年 31 巻 10 号 p. 1143-1151

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抄録

B型慢性肝炎患者より得た生検肝組織を用い,肝組織内HBs抗原,HBc抗原の陽性細胞率(HBs抗原,HBc抗原陽性細胞数の肝小葉内に占める割合)と肝門脈域Leu3A (CD4)/T8(CD8)細胞比(Po-L3/T8),肝実質域T8(CD8)/T1(CD5)細胞比(Pa-T8/T1)と肝細胞障害との関連を検討し,Po-L3/T8, Pa-T8/T1の間に有意な関連性を認めた.Po-L3/T8, Pa-T8/T1が共に高値を示す症例ではHBc抗原陽性細胞率が高く,かつ肝実質域に強い炎症所見を認め,ALT値も高い傾向にあった.Po-L3/T8が高い症例では低い症例に比し,HBc抗原陽性細胞率が高い傾向にあった.一方Pa-T8/T1が高い症例では低い症例に比し,肝実質域に変性や壊死を伴う著明なリンパ球浸潤を認め,ALTも高値を呈した.以上よりHBV感染肝細胞障害においてPo-L3/T8が肝細胞内HBc抗原に反応すると同時にPa-T8/T1の変動に関与し,一方Pa-T8/T1はHBV感染肝細胞に対する肝細胞障害の過程に関与していることが示された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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