肝臓
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肝硬変の肝細胞のDNA合成における男女差について
BrdU Labeling Indexによる検討
大川 伸一多羅尾 和郎清水 昭男原田 昌興玉井 拙夫伊藤 義彦久邇 之房長岡 正
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キーワード: 肝硬変症, DNA合成, 男女差
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1990 年 31 巻 10 号 p. 1159-1163

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抄録

肝硬変(LC)の肝細胞のDNA合成能に男女差が存在するか否かを,Bromodeoxyuridine (BrdU)によるLabeling Index(L.I.)から検討した.腹腔鏡下肝生検にて採取した組織を,0.1%BrdU RPMI1640溶液中で45分間振盪培養し,免疫染色にてBrdUのL.I.を算出した.男性LCのL.I.は2.2±0.3%と高値であったのに対し,女性LCのL.I.は1.1±0.3%と低く,2%の危険率をもって男性が有意の高値を示した.血液肝機能検査で,男女間に有意差は無かった.慢性活動性肝炎(CAH)についても同様に検討し,男性CAHのL.I.が1.2±0.2%であったのに対し,女性CAHのL.I.は0.9±0.2%であり,両群間に有意差は無かった.肝硬変症例のうち,2年以上の経過観察を行った男性14例から6例のHCC発生を認めたが,女性7例からはHCCの発生は無かった.HCCの発生率における男女差に,LC組織におけるDNA合成能の男女差が関与しているものと推察された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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