肝臓
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ヒト肝硬変に於ける肝リンパ管の改築像に関する研究
渡邊 清治
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1990 年 31 巻 10 号 p. 1164-1175

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抄録

38例の肝硬変症,5例の肝線維症および14例の正常対照病理剖検肝のリンパ管内に,バリウム加5%ゼラチン混合液を直接穿刺注入し,肝硬変における肝リンパ管構築の改変像を検索した.(1)肝被膜の偽小葉結節隆起面では,肝毛細リンパ管網および肝リンパ管は著明に減少し,(2)偽小葉結節をとり囲む間質結合織には,著明に迂曲蛇行した肝毛細リンパ管の集合管および肝リンパ管が密に集簇し,間質結合織の疎な領域では,肝毛総リンパ管がさらに増加していた.既存のGlisson鞘を除くと偽小葉結節内にはリンパ管を認めなかった.(3)肝リンパ本幹は,肝容積の減少に伴い蛇行と念珠状化が目立った.以上の改変像は,肝内に於けるリンパ流出障害を示唆する所見と考えた.(4)リンパ小水泡の一部に微細なリンパ管の存在を認め得た.リンパ小水泡の発生や,腹水との関連について若干の考察を加えた.(5)18例に肝細胞癌の合併をみたが,癌結節内にはリンパ管を認めなかった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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