肝臓
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肝癌合併の大酒家肝硬変におけるHCVの関与について
石井 邦英佐田 通夫神代 龍吉井出 達也中野 均田中 信平古寺 重喜田中 正俊真島 康雄平井 賢治安倍 弘彦谷川 久一
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1990 年 31 巻 10 号 p. 1181-1185

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抄録

アルコール性肝硬変における肝細胞癌の合併にC型肝炎ウイルス(HCV)の感染が影響しているか否かを明らかにするため,血中の抗HCV抗体(カイロン抗体)を測定し臨床経過と対比した.対象とした肝癌合併の大酒家肝硬変18例中14例(77.8%)が抗HCV抗体陽性であった.抗体陰性の4例中3例(75%)は肝癌診断時まで飲酒を続けていたが,抗体陽性の14例中9例(63.4%)は断酒後1~10年の間に肝癌の発生がみられた.肝癌診断時まで飲酒を続けた例(以下,飲酒例)において平均年齢を比較すると,抗体陽性例が陰性例に比べ約3歳若かった.抗体陽性例において飲酒例と断酒後3~10年の間に肝癌を発生した例を比較すると,平均年齢は飲酒例が約6歳若く,積算飲酒量も飲酒例に多い傾向が認められた.以上の事より,HCV感染は大酒家にみられる肝硬変における肝癌発生の原因として重要と考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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