1990 年 31 巻 10 号 p. 1191-1196
肝細胞における細胞内カルシウム動態の意義を明らかにするため,初代培養肝細胞を用いてホルモン刺激後のカルシウム動態を経時的に測定した.培養早期の肝細胞ではvasopressinおよびphenylephrineに対して細胞内カルシウムの著明な上昇を示したが,培養時間の経過にともなって反応性は低下,遅延し,12~24時間後には反応は消失した.これは肝細胞が増殖に向かうにつれ,これらのホルモンのreceptorが減少することによりphosphatidylinositol代謝系を介したカルシウムのシグナルが減衰したものと考えられ,このシグナルの変化が肝細胞の増殖分化と関連していることが示唆された.