肝臓
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三層構造よりなるNodule in nodule像を呈した肝細胞癌の1例
井尻 正廣杉原 茂孝中島 収清松 和光枝光 理神代 正道才津 秀樹牟田 幹久馬田 裕二奥田 康司中山 和道
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1990 年 31 巻 10 号 p. 1223-1227

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抄録

三層構造よりなるNodule in nodule像を呈した肝細胞癌の一手術例を報告する.55歳,男性.近医にて慢性肝炎フォロー中,腹部超音波検査(US)で肝腫瘤を指摘され入院.US上,周囲にhaloを伴い三層構造をとる腫瘤で肝癌と診断され摘出された.肉眼的には大きさ2.7×2.2cmの単結節型で,組織学的には最内層は索状型の中分化肝細胞癌,中間層は脂肪化の著しい高分化肝細胞癌,最外層は脂肪化のない細索状構造を示す高分化肝細胞癌であった.本例は三層の組織像の異なる癌組織よりなる肝細胞癌で,各層は超音波像をよく反映していた.一般に,Nodule in nodule像を呈する肝癌では,結節内の結節はより低分化な癌組織よりなり,その周囲により高分化な癌組織が位置することが多いが,本症例では最初に中間層にみられる脂肪化を伴う高分化癌が発生し,後に結節内部及び外側により低分化な組織像の異なる癌組織が増殖してきたため三層構造をとるようになったと推察される.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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