抄録
長期間の炭粉曝露により肝網内系に炭粉沈着を認めた極めて稀な症例を報告する.症例は62歳男性.主訴:全身倦怠感,現病歴:元来大酒家であったが,昭和57年初旬,全身倦怠感出現,近医を受診しアルコール性肝炎を疑われ精査のため昭和63年9月当科入院となる.生活歴:日本酒4合/日35年(昭和57年以後断酒).22歳時より18年間炭坑で働く.入院後の生検肝組織のHE染色にて軽度の線維の増生を認める門脈域とその周囲の類洞内Kupffer細胞内に緑褐色の色素沈着を認めた.透過電顕による観察にてelelctrondenseな物質を多数含むmφを認め,元素分析を行なったところ,珪素とアルミニウムを含む物質と判明した.