1992 年 33 巻 1 号 p. 21-27
肝疾患(162例)をアルコール性肝障害群(alcoholic liver disease: ALD)72例とアルコール性肝障害群(Non-ALD)90例にわけ,各群における赤血球膜と血漿の脂質を比較検討した.脂質の測定にはthin-layer chromatography with a flame ionization detector(TLC-FID)法を用いた.肝機能の低下にほぼ比例して,平均赤血球容積(MCV)と膜freecholesterol(FC)は増加した.肝硬変においてはアルコールそのものより肝障害の程度により赤血球膜脂質の変化が規定されるものと思われた.脂肪肝においてはALDではNon-ALD比べてMCVと膜FC/PL比の有意の上昇がみられ,比較的肝障害の軽い脂肪肝ではアルコール過剰摂取が赤血球膜の流動性を低下させている可能性があると推察された.さらに肝機能障害が進むに従いリン脂質の内層/外層比が低下し,膜が固くなる傾向が示唆された.膜の流動性を示す膜FC/PL比は,ALDでは血漿FC/PL比と正相関(r=0.65, p<0.01)がみられた.