肝臓
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トランスアミナーゼに比しα-フェトプロテインの高値で発症し早期に肝硬変に移行したB型肝炎ウイルスキャリアーの1例
武田 和久竹林 治朗瀬津 弘順
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1993 年 34 巻 7 号 p. 548-552

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抄録

症例は21歳の女性.18歳の時定期検診でHBs抗原の陽性が判明したが,血清GOT, GPTが正常であったので経過観察中,21歳の時,吐気,嘔吐に続く食欲不振で発症し,GOT, 175KU, GPT 173KUの上昇に対し血清α-フェトプロテイン(AFP)は1,237ng/mlの高値を示した.その時点における生検肝組織で,壊死巣中ないし近接部位の残存肝細胞にAFP染色の陽性所見を得た.IFNβ 600~300×104単位28日間の投与でHBe抗原陽性からHBe抗体陽性へと転換し,GOT, GPT, AFPも低下したが完全に正常化しなかった.画像的には急性肝炎に合致したが,組織学的には発症の時点ですでに活動性慢性肝炎の像を呈し,約2年後の腹腔鏡検査において肝硬変への移行がみられた.血清AFPの上昇は残存肝細胞の再生よりも障害部位の残存肝細胞そのものの変化を反映し,重篤な肝障害による予後不良の指標として重要であることを示す症例として呈示した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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