肝臓
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新しい人工肝補助療法を施行したアセトアミノフェン起因性急性肝不全の1例
萱嶋 信介箱崎 幸也近藤 寿郎藤岡 高弘峯 雅文三谷 圭二吉野 孝之白浜 龍興松熊 晋桑原 紀之
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1998 年 39 巻 2 号 p. 77-81

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抄録

症例は21歳男性. 平成7年9月18日, 大量の市販鎮痛薬のフェナブロン等 (アセトアミノフェン: 9,000mg) にて服薬自殺を図り, 傾眠状態で近医入院. 入院直後の血液・生化学検査では異常値は認められず, 入院3日目の近医の検査で, AST 4, 377IU/l, ALT 1, 688IU/lと異常高値を示したため当院に転院. 当院入院時, 肝性昏睡II度, PT 28%, HPT 36%より急性肝不全と診断し, 血漿交換 (PE), 血液濾過透析 (HDF), N-アセチルシステインの解毒療法を施行した. 意識障害は治療開始後すみやかに改善し, 服薬後15日目にはAST 26IU/l, ALT89IU/lまでに改善した. 服薬後15日目に施行した肝生検所見では, 中心静脈周囲の著明な出血性壊死を認めた. 本症のようなアセトアミノフェン起因性急性肝不全例では, 初期の適切な処置と共に人工肝補助療法は予後を改善しうるものと推測され, 示唆に富む症例と考えられ報告した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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