1998 年 39 巻 3 号 p. 166-169
症例は34歳, 男性. 平成7年6月白血球増多症の精査のため当科初診. WBC 2, 3500/μl, Ph1染色体陽性であり慢性骨髄性白血病 (CML) と診断, 同年11月1日HLAの一致した38歳の姉より同種骨髄移植を施行した. 移植前の血液検査では, 患者はHBs抗原陽性, HBe抗体陽性, DNAポリメラーゼ陰性のHBVキャリアーで, ドナーはHBs抗体陽性, HBc抗体陽性でありHBVに対する免疫が成立していると考えられた. 移植後, ALTは36日目に134IU/lまで上昇し, 41日目にHBs抗原陰性, HBs抗体陽性となり以後ALTは一旦正常化した. その後移植片対宿主病の合併を認めたがCMLの再発はみられず平成9年3月までの15カ月間HBs抗原陰性, HBs抗体陽性の状態は持続した. 本症例ではドナーのHBVに対する免疫移行によりレシピエントにメジャーセロコンバージョンが起こったものと考えられた.