抄録
日本に侵入したミナミアオカメムシの卵寄生蜂Trissolcus basalis(Wollaston)(TB)と土着のTrissolcus mitsukurii(Ashmead)(TM)の寄生習性を比較し,2種の競合影響について考察した。被寄生卵の黒色度から判断すると幼虫期間はTM の方が短い。しかし羽化までの日数はTB の方が約1日短かった。2種間で共寄生が起こった場合,蛹化までの発育が早いTM 幼虫の方が生存競争に勝ち残る個体が多いと考えられる。TM 雌成虫は極めて強い攻撃性を示し,同種間で競争的闘争をするため産卵行動に集中できず,産卵に必要以上の時間を要した。対照的にTB は同種または他種に対してもほとんど攻撃性を示さず,短時間で寄生を終了させた。ミナミアオカメムシ1卵塊に同時にTB とTM を寄生させた時,羽化個体の大部分はTM であるが,TB の割合は各種1雌個体では5.8%,TB 2雌個体とTM 1雌個体では23.4%で,TB は少ないながら確実に寄生することができた。蜂蜜と水を十分に与えた条件では,産卵未経験のTB 雌個体の寿命は90日,TM 雌個体は60日で,産卵経験有りの雌個体では,TB が48日,TM が23日となった。産卵の有無にかかわらずTB の方がTM より寿命が長かった。TB の生涯寄生産卵数は258で,羽化した雌個体の割合(雌/(雄+雌))は0.48であった。一方,TM の生涯寄生産卵数は125,雌個体の割合は0.77で,明らかに性比は雌に偏っていた。湿度20~30%の乾燥条件でTB は21%の個体が正常に羽化することができたが,TM は乾燥条件ではまったく羽化できなかった。TB はTM との共寄生において不利である。しかし,これらの結果はTB が乾燥時に対応できる高い能力を持ち,寄主の相対密度が高く寄主卵塊が多く存在する時,より速く産卵を完了し,長寿命で産卵数が多いTB の方が多くの子孫を残すことを示唆している。