2020 年 62 巻 p. 71-77
各生産圃場におけるフジコナカイガラムシおよびナシマルカイガラムシに対する防除適期は,直近の気象観測点データの有効積算温度から予測してきたが,気象観測点から遠い場所は予測が難しかった。そこで,メッシュ農業気象データを用いて,これら害虫の防除適期を予測し,2018年,2019年の圃場における実際の発生消長データと比較することにより,その精度を検証した。有効積算温度の計算には,メッシュ農業気象データは三角法を用い,気象観測点データは毎正時データを用いた。その結果,両種ともメッシュ農業気象データを利用した場合,精度良く防除適期を予測することができた。このことから,本手法は気象観測点から遠く,気象観測データを用いた予測と実測に誤差が生じていた圃場においても,的確な防除適期を把握することができると考えられた。さらに,本手法をPythonプログラムで実装することで,県域等の広域範囲の防除適期を短時間で出力することが可能であるため,効率的な防除指導が推進できると考えられた。