2023 年 65 巻 p. 28-34
スクミリンゴガイは,移植直後のイネを食害する有害生物である。本種の防除にはコイの餌,米ぬかおよび米麹を重量比で1:1:1になるように混合したMix餌を使用したトラップの有効性が指摘されてきている。しかし,同餌には他の生物種も誘引される可能性があり,水生生物に及ぼす負の影響が懸念される。本研究では,Mix餌が水生生物の誘引と生存に及ぼす影響を把握するために,滋賀県の水路と水田において,Mix餌を入れたトラップに捕獲される生物を調査した。その結果に基づき水生生物種を選定し,水田において,Mix餌がその生存率に及ぼす影響を明らかにした。トラップには,魚類6種,貝類3種,水生甲虫9種およびカエル類3種(幼体)が捕獲された。水田での調査の結果,Mix餌はミナミメダカ,ヒメタニシ,水生甲虫,ならびにカエル類の幼生各種の生存率に影響を及ぼさなかった。以上のことから,Mix餌には様々な水生生物が誘引されるものの,その生存に及ぼす影響は小さいことが示唆された。