2023 年 65 巻 p. 35-41
愛知県のコムギうどんこ病菌におけるQoI殺菌剤耐性を調べるため,2021年にコムギ産地6地区から本病原菌を採取し,QoI剤感受性の生物検定とシーケンス解析によるcytb遺伝子の変異調査を実施した。その結果,QoI剤に耐性を示した株が存在し,それらの株はcytb遺伝子にG143A変異を有することが判明した。さらに,この病原菌の耐性型アレルと感受性型アレルを識別するために,quantitative allele-specific PCR(ASqPCR)を実施し,本法が有効であることを確認した。2022年には,県内24地点から本病原菌を計72菌株採取し,ASqPCRにより耐性と感受性を判定した。その結果,QoI剤耐性型アレルを持つ株は県内に広く分布していることがわかった。また,耐性型アレルと感受性型アレルが混在したサンプルについては,両アレルの存在比を明らかにした。本論文は,コムギうどんこ病におけるQoI剤耐性の地域内分布を定量的に明らかにした,国内初の報告である。