2023 年 65 巻 p. 42-47
2019年5月,静岡県静岡市のガラス温室内のブンタン新葉に奇形・縮葉が生じた。これら症状を呈したブンタンでチャノキイロアザミウマの寄生が確認された。本種においてはYT系統およびC系統が知られていることから,ブンタンにおける症状がどの系統に由来するかを明らかにするために,マルチプレックスPCRにより系統識別を行った。本研究で調査したチャノキイロアザミウマの6個体は全てYT系統に属することが明らかとなった。ミトコンドリアチトクロームオキシダーゼの塩基配列情報を用いたハプロタイプネットワーク解析により,これら6個体は4つのハプロタイプ(SdYT01,SdYT02,SdYT09およびSdYT38)より構成されることが明らかとなった。加えて,今回解析した東アジアのYT系統に属するチャノキイロアザミウマ集団は計51のハプロタイプにより構成されることが明らかとなった。カンキツから採集した個体のハプロタイプは,特定のハプロタイプにより構成されていなかった。