抄録
ハラジロカツオブシムシの各時期を乾魚を餌として異なった温度のもとで飼育し, その生活史や経過日数等について調査した.
I. 成虫期に関する調査 (1) 雄の末端の環節の腹面には黒色の大きな斑紋が顕著であり, 又その上部の環節の中央には黒色の小さな斑紋が認められ, その中央部に褐色の毛を生じている. 雌にはこの小黒斑が認められず, 中央の褐色毛の分布も認められない. また末端の黒色の斑紋もうすい. (2) 体長は雄では0.771mm雌では0.814mmである. 体巾は雄では0.298mm, 雌では0.320mmである. (3) 成虫の生存日数は30℃の飼育温度では31日, 25℃では40日で, 温度の低い場合はさらに長期にわたった. (4)産卵数の平均値は20.3粒で, 産卵の多くみられるのは羽化後から10日目頃までであった. II. 卵期に関する調査 (5) 卵期間は30℃では3.8日, 20℃では4.8日, 10℃では10.8日で, 卵の長径は1.40mm, 短径は0,58mmであった. III. 幼虫期に関する調査 (6) 幼虫期間は30℃では31.6日,20℃では44.8日であった. (7) 幼虫の頭巾の頻度分布は0.587~0.823mm, 0.859~1.029mm, 1.063~1.267mm, 1.301~1.539mm, 1.573~1.777mm, 1.811~2.015mmの6の群に大別され, 6令が認められる. (8) 令と頭巾のモード値との間にはY=0487+0.231Xの関係が認められる. IV. 蛹期に関する調査 (9) 蛹期間は30℃では7.2日, 20℃では13.1日であった. V. この地方では成虫が産卵活動を始めるのは4月上旬で, それから後の気温と各飼育温度における経過日数を考え併せると, この虫は年間3回または2回の発生を繰り返すものと推測される. VI. この虫が木材に食入加害するのは主として老熟幼虫に限られており, 蛹化場所を求めるためであろう. 成虫期でも多少木材を食害することもあるが, この場合成虫の産卵はみられなかった.