日本火災学会論文集
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論文
放熱不良に起因する電線被覆の熱劣化による短絡のメカニズムに関する研究
李 義平大谷 英雄関 勉長谷川 秀夫今田 修二矢代 勲
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2001 年 51 巻 2 号 p. 75-81

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抄録
火災統計によれば電気火災は年々緩やかな増加傾向にある。その中でも短絡によるものが多い。電気コードなどの短絡の要因はいろいろあるが,熱劣化による短絡は主な原因の一つである。(1)被覆の温度がジュール熱などにより急に上昇して短絡する場合と(2)脱塩酸反応をする温度以上ではあるがすぐには短絡しない温度で長時間の熱劣化により短絡する場合とのメカニズムを検討したところ,以下の結果が得られた。1)ビニル平行コードは,放熱不良がなく直線上に伸ばした場合は分岐遮断器の定格電流(20A)の負荷以下では短絡までは至らないが,束ねると分岐遮断器などの保護設備とは関係なく,コードの許容電流程度の負荷でも短絡する。2)ジュール熱により被覆の温度が急に高くなって数分以内に短絡する場合は,被覆の軟化・溶融による線間接触により短絡する。長期間の熱劣化による短絡は,被覆自体の絶縁抵抗の低下により短絡する場合と,吸湿性のCaCl2の吸湿により短絡する場合がある。3)熱劣化過程で発生するHClと充填剤として添加されているCaCO3が反応して吸湿性を有するCaCl2が生じてから,吸湿して短絡するメカニズムが考えられ,CaCl2の生成は定量的に確認可能である。
(オンラインのみ掲載)
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© 2001 日本火災学会
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