一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
57回大会(2005年)
セッションID: 1P-9
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新潟・富山・長野における鮭と鰤の嗜好と摂食(第1報)
-統計年報等から探る生産・流通・消費の変遷-
*高橋 洋子加藤 征江粟津原 宏子小谷 スミ子
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キーワード: , , 新潟, 富山, 長野, 統計年報
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抄録

目的: 年越しの膳に欠かせない“年取り魚”は、東日本では鮭、西日本では鰤で、東西の境界は糸魚川-静岡構造線付近とされる。本報では、その境界に位置する新潟・富山・長野の3県における、鮭と鰤の生産・流通・消費の変遷に関する文献調査を行った。現在の漁獲量からは鮭や鰤の主要産地とはいえない3県において、過去の漁業実績や加工品製造等から、現在も鮭や鰤が特別な魚と認識され、購入量にも反映している様子を検証する。
方法: 農林水産省統計表・県史の資料編・古文書の記録等から、鮭と鰤の漁獲量、および塩鮭・塩鰤の生産量の変遷を調べた。また、家計調査年報から購入量を、『日本の食生活全集』『地域資源活用食品加工総覧』等から用途や調理法・加工法などを調査した。
結果: (1)現在の購入量:家計調査の都道府県庁所在市別ランキング(平成13から15年平均)で、購入量(一世帯当たり/年)の全国順位を比較すると、「さけ」は長野3位・新潟7位・富山23位、「塩さけ」は新潟2位・富山6位・長野13位、「ぶり」は富山1位・新潟27位・長野43位であった。(2)現在の購入量に影響していると考えられる歴史的背景:<鮭>平安時代から江戸時代にかけては、新潟・富山・長野が鮭の主要産地であった。新潟では独特の塩引鮭が製造され、江戸時代から鮭の孵化事業が行われた。昭和初期にダムができるまでは、日本海から遡上した鮭が長野県内でも多数捕獲されていた。<鰤>富山湾は古くから鰤の名産地で、定置網漁法の発祥地としても知られる。そこで獲れた鰤が塩鰤(寒鰤の塩干品)に加工され、流通の経由地名を冠した「飛騨鰤」「糸魚川鰤」として信州に運ばれ、“年取り魚”になったが、塩鰤の生産は昭和20年代に激減した。

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© 2005 一般社団法人 日本家政学会
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