一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
59回大会(2007年)
セッションID: G2-2
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江戸時代の料理書にみる煮物料理における調味料の変化
*松本 美鈴
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抄録

目的 近世中期以降には,砂糖生産の増加,関東しょうゆの普及,酒粕からの粕酢の製造など,調味料文化が発達した.このような調味料の普及が,和菓子,にぎりずしを初めとする日本料理の発展に寄与した.本研究では,調味料の普及が煮物料理に与えた影響を明らかにするために,江戸時代の料理書にみる煮物料理の調理方法を調査し,煮物料理に用いられる調味料の変化を捉えることを目的とした.
方法 調査資料としては,『翻刻江戸時代料理本集成』(臨川書店)に所収の江戸初期から末期までの料理書36種を用いた.料理書から煮物料理の調理方法に関する記載を抽出し,使用されている調味料を整理した.今回の調査では,「煮物とは、食材の煮熟と調味を目的として,煮汁の多少に関わらず,調味料を加えた煮汁のなかで食材を焦がさないように加熱することで調理が完結する料理である.」と定義した.
結果 『料理物語』(1643)では,味噌,たれ味噌,たまり,酢,煎り酒,だしなどが煮物の調味料として記載されていた.『料理網目調味抄』(1730)では,たれ味噌,たまり,煎り酒の記載はみられず,しょうゆと酒を組み合わせた調味が多くみられた.砂糖使用の初見は,『合類日用料理抄』(1689)の「煮大豆の方」においてであった.その後,『和漢精進料理抄』(1697)のような精進料理,普茶料理,卓袱料理の料理書を中心として砂糖の記載がみられた.一方,みりん酒使用の初見は,『萬寶料理秘密箱』(1800)の「赤貝和煮」においてであった.江戸後期に刊行された『料理早指南』,『素人庖丁』,『料理通』などを初めとする料理書には,煮物の調味料としてみりんや砂糖のような甘味料の記載が多く見られるようになった.

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