一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
59回大会(2007年)
セッションID: P-104
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彦根の特産物の伝承とその展開
*河野 篤子
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キーワード: 伝承, 彦根, ワリンゴ 
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抄録

【目的】滋賀県彦根市は歴史的、風土的に恵まれ、食材が豊富で、地域の名前がついた特産物が多数あったが、現在まで伝承されているものは少ない。現在栽培されていないが、特産物の一つであった「彦根りんご」は、中国より日本各地に伝来したといわれるワリンゴの一種である。彦根藩井伊家の古文書などにもみられ、彦根藩との関わりが深かったことが窺える。そこで、「彦根りんご」に焦点をあて、地域おこしのモデルとして展開することを地域の人とともに試みた。【方法】ワリンゴ、「彦根りんご」に関する文献調査により現在までの状況を把握するとともに、各地に残存するワリンゴおよび野生種の品種を調査し、利用可能な品種を選抜して栽培し、将来の利用方法を検討する。【結果】ワリンゴは『和(倭)名類聚抄』に記載があることから平安時代には既に伝来し、『享保・元文諸国産物帳』によると江戸時代には日本各地で栽培されており、彦根でのりんご栽培は『彦根藩井伊家文書』、『八木原太郎右衛門文書』などにみられるように、江戸中期よりおこなわれていた。しかし、『彦根の植物』によると、交通の発達や西洋りんごの導入などにより昭和30年代に栽培は途絶えている。新たに「平成の彦根りんご」再現のため、市民グループ「彦根りんごを復活する会」が立ち上がった。会では過去の資料をもとに、石川、長野および岩手の農業研究施設の協力を得て、数種のワリンゴや野生種を含む50種を選抜し、平成15年より米原市堂谷にある米原ワリンゴ園で栽培中である。現在、彦根市内の彦根りんご園や芹川の公園への移植し、市民への啓発をおこなっている。また、特産品として 菓子、シードルなどへの商品化も検討している。

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