一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
64回大会(2012年)
セッションID: 3D-3
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口頭発表 5月13日 被服
片腕拘縮者が着こなしを楽しむための4種の袖形状に対する官能評価と衣服圧
*伊藤 海織椎葉 美咲
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抄録

目的 現在の身体障害者向けの衣服は,機能や介護者の便宜を優先して作られていることが多い.しかし身体障害者の自立を支援する上で,機能のみならず好みで様々な衣服を選択してもらうことは重要であると考える.そこで片腕拘縮者に焦点を当て,4種の袖形状について,動作の容易さと見た目の好ましさを両立する設計指針を得ることを目的とした.
方法 5名の女子学生の右肘を固定し,(1)タイトスリーブ,(2)シャツスリーブ,(3)ビショップスリーブ,(4)レッグオブマトンスリーブのブラウス着用実験を椅座位で行った.官能評価では着衣動作,右上肢動作,デザインに関する質問に対し5段階評価させた.衣服圧は左右の肩先点,後腋窩点,肘頭点,前腕部で測定した.相関と主成分分析から,普段着への活用との関連を考察した.
結果 全種の袖に対する官能評価より,袖幅と袖のゆとりに,さらに袖のゆとりと2種の動作の容易さ,普段着への活用に関連があった.袖幅を太くすると肘屈曲時に袖口が近位に引っ張られなくなり,ゆとりがあるように感じられるためだと考えた.各袖における普段着への活用との関連は,次の通りであった.(1)着衣動作の容易さが関連していた.(2)見た目の好ましさが関連していた.(3)官能評価の得点が全体的に高かったが,強く関連する項目はなかった.(4)見た目の好ましさ,袖付け部分の縫い目に負の相関があった.被験者になじみのない袖形状であるため,袖付けの縫い代が厚くなるためだと考えた.衣服圧は普段着への活用に大きな影響を与えていなかったが,着衣動作の官能評価と肘頭点,後腋窩点の衣服圧に関連が見られた.また動作時に,負荷がかかる場所と感じる場所が異なっていた.

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© 2012 一般社団法人 日本家政学会
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