目的 キイチゴ(Rubus spp.)は、ヨーロッパや北アメリカを原産とするバラ科キイチゴ属の低木性果樹である。果実が潰れやすく腐りやすいため、生果での流通が難しく、国内需要のほとんどを、海外から輸入された冷凍品に頼っている現状である。本研究では、キイチゴの国内需要が増していることと、秋田県五城目町で新たな特産品として生産量増加に取り組んでいることに鑑み、種々の条件がキイチゴの成分に与える影響を調べ、その用途拡大を図ることを目的とした。方法 実験試料として、五城目町産のヘリテージ、チルコチン、ハノーバ、イエローの4品種を用いた。常法に従って一般成分を分析し、分光光度計でアントシアン色素含量を測定し、ペーパークロマトグラフィーでアントシアン色素の分離・同定を行った。果実抽出液の色調は測色色差計で測定し、総ビタミンCの定量はヒドラジン法で行った。結果 ペーパークロマトグラムから、ヘリテージとチルコチンにはデルフィニジン類似のスポットが、ハノーバにはマルビジン類似のスポットが認められた。冷凍キイチゴを冷蔵庫内で1週間解凍したところ、総ビタミンCの残存率は、ハノーバで55%、ヘリテージで24%と品種により大きく異なった。510nmにおける果汁の吸光度は、ハノーバの方がヘリテージよりも高かったことから、アントシアニンがビタミンCの損失を防いでいることが示唆された。