2015 年 39 巻 3 号 p. 642-646
HAGL損傷(humeral avulsion of the glenohumeral ligament lesion;下関節上腕靭帯骨頭側剥離損傷)を伴う肩関節外傷性前方不安定症に対してスーチャーアンカーを用いた鏡視下手術を行った21例21肩(平均手術時年齢28.4歳)の後ろ向き調査を報告する.術前MRA(MRI arthrography)上, J signまたは骨頭側からの造影剤の漏出のいずれかを全例で認めた.術後観察期間は平均14.6ヵ月であった.合併症は腋窩神経近傍の関節包に糸がかかり縫合し直した1肩のほか,腋窩神経障害が2肩,筋皮神経障害が1肩あったが自然軽快した.最終観察時の平均肩関節外旋制限は下垂位で12度,90度外転位で14度,日本肩関節学会肩関節不安定症評価法は術前48点から術後91点へ有意に改善した.安定性の獲得ではほぼ満足できたが,腋窩神経損傷に対する注意が必要である.