2015 年 39 巻 3 号 p. 658-660
我々は以前の学会で術後上腕骨頭の内反転位を来しやすい骨折型はAO/OTA分類11-A2.2,11-A3.2,11-A3.3であり,髄内釘固定にRope-over-bitt法(以下ROB法)を併用することで内反転位を抑制できることを報告した.今回上腕骨頭内へのリン酸四カルシウムセメント(以下CPC)の注入により術後内反転位を抑制できるかについて検討したので報告する.
2007年4月以降,AO/OTA分類11-A2.2の上腕骨外科頚骨折に対して髄内釘固定を行った60歳以上の女性14例14肩を対象とした.全例ポララス髄内釘を使用し,髄内釘固定のみの症例は5例(N群),髄内釘固定にROB法を併用した症例は4例(R群),髄内釘固定にCPCを併用した症例は5例(P群)であった.術直後の頚体角と骨癒合後の頚体角の差(内反転位角度)を3群で比較した.内反転位角度の平均はN群13.9±3.9度,R群4.7±3.7度,P群1.2±0.6度であり,N群とR群,N群とP群に有意差を認めた.髄内釘固定に骨頭内へのCPCの注入を併用することで術後内反転位を抑制できる可能性がある.