抄録
腱板筋の質が腱板大・広範囲断裂の術後長期成績にどのような影響を及ぼすのかを明らかにする目的で調査した.腱板大・広範囲断裂に対し腱板修復術を施行し,術後10年以上経過した35例36肩を対象とした.術後1年時と10年時のUCLA score,関節可動域,徒手筋力,画像所見(関節症性変化, cuff integrity,腱板筋の脂肪浸潤)を調査し,2群間で比較検討した.各群間に有意差を認めなかったのはtotal UCLA score,屈曲筋力と外転筋力,cuff integrityと棘上筋の脂肪浸潤であった.術後10年で有意に悪化したのは,関節可動域,外旋筋力,関節症性変化,棘下筋と肩甲下筋の脂肪浸潤であった.今回の結果から,棘下筋と肩甲下筋の脂肪浸潤が強い場合でも,十分な骨頭の被覆ができればforce coupleが再建され,術後のtotal UCLA scoreや屈曲筋力と外転筋力が術後10年まで維持されるのではないかと考えた.