肩関節
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45 巻, 1 号
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検査
  • 菅野 敦子, 相澤 利武
    2021 年 45 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨近位端骨折の加療において骨脆弱性を把握することは大事であるが,骨密度を早期に測定することは難しい.上腕骨近位部の皮質厚と,腰椎正面及び大腿骨正面の骨密度との関連を調べた.また,骨密度低下を予測するためのカットオフ値となる皮質厚を検索した.男性11例,女性111例が対象である.腰椎・大腿骨とも,若年成人比(以下%YAM)70%未満の症例では,70%以上の症例と比して有意に皮質厚が薄くなっていた.皮質厚と骨密度とには正の相関が認められ,大腿骨側でより強い相関を認めた.皮質厚5.0mmをカットオフ値とした際に,大腿骨骨密度で陽性的中率86.7%,陰性的中率67.6%,正確度76.1%と最も高い値を示しており,5.0mmが骨密度低下を予測できるカットオフ値と考えた.欧米での研究と比べて骨密度低下を予測する皮質厚が薄く,体格の違いが影響した可能性が考えられた.
病態
  • 高瀬 勝己
    2021 年 45 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     日本肩関節学会会員に肩鎖関節損傷の重症度評価のアンケート調査を行った.調査項目は画像診断方法,重症度評価に用いる分類方法,重症度の評価方法とした.回答者は183名であった.画像診断には全員が肩鎖関節前後像を用いていたが,追加画像として98名が3DCT,38名がMRIを用いていた.重症度評価には141名がRockwood分類を用いていたが,Type IIIの評価は119名が鎖骨下縁が肩峰上縁を超えた場合とし,Type Vは118名が健側比の烏口鎖骨間距離を用いていた.一方,Type IVは,57名が垂直方向の変位の程度に関わらず鎖骨の後方変位を認めた症例に対し,88名は肩鎖関節亜脱臼かつ鎖骨の後方変位を認めた場合としていた.重症度評価にはRockwood分類を用いることが本邦では一般的であったが,Type IVの診断に関しては一定の見解がなかった.鎖骨上方変位および後方変位を合併した症例をどのように診断するか今後の議論が必要である.
脱臼
  • 若宮 みあり, 岩下 哲, 大久保 敦, Majima Tokifumi, 橋口 宏
    2021 年 45 巻 1 号 p. 10-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     われわれは,鎖骨と肩甲骨の協調運動と鎖骨のsuspension mechanismを再獲得するため肩鎖関節脱臼Rockwood分類type IIIに対して手術加療を推奨している.当院で関節鏡下にDog Bone ButtonTMによる烏口鎖骨靱帯再建とソフトアンカーを用いた肩鎖靱帯再建を行い,臨床成績を検討したので報告する.対象は肩鎖関節脱臼Rockwood分類type III新鮮例に対して鏡視下靱帯再建術を施行した7例である.評価項目は最終診察時の単純X線所見,JOA score,JSS-ACJ score,術中・術後合併症とした.また,単純X線で骨孔拡大および亜脱臼率を評価した.術後平均JOA scoreは93.7点,平均JSS-ACJ scoreは91.6点,単純X線で骨孔拡大を5例,術後亜脱臼を1例に認めた.今回,概ね良好な成績を得たが,合併症として鎖骨の骨孔拡大を高頻度に認め,1例で亜脱臼を認めたことを考慮すると,より解剖学的な烏口鎖骨靱帯再建やより強固な肩鎖靱帯再建といったさらなる工夫が必要である可能性が示唆された.
  • 梶山 史郎, 佐田 潔, 松尾 洋昭, 尾﨑 誠
    2021 年 45 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     鏡視支援下直視下Bristow変法(鏡視支援下法,10例10肩)の烏口突起設置位置とスクリュー挿入方向を術後の3D-CTを用いて評価し,直視下Bristow変法(直視下法,2例)と比較した.鏡視支援下法の手術は前方5cmの皮膚切開より直視下に烏口突起骨切り,肩甲下筋の切開を行った後に,鏡視下に確認しつつ烏口突起骨片の固定を行った.3D-CTにて烏口突起と関節窩縁の距離(HP),矢状断での関節窩への設置角度(VP),横断像でのスクリューの角度(A-angle),矢状断像での角度(S-angle)を計測した.鏡視支援下法のHPは-1.4 ± 1.2(SD)mm,VPは5.4 ± 17.4(SD)度であった.A-angleは32.6 ± 6.5(SD)度,S-angleは -17.2 ± 8.7(SD)度であった.直視下法ではHP-1.7,-0.5mm,VP 23.7,27.7度,A-angle 19.0,21.0度,S-angle 2.7,1.3度であった.鏡視支援下法では,HPは目標位置に設置できていたが,VPおよびスクリューの挿入角度は目標の位置や角度に設置できていなかった.
  • 伊佐治 雅, 尼子 雅敏, 岡林 俊貴
    2021 年 45 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     自衛隊員の外傷性肩関節不安定症に対する鏡視下Bankart修復術(ABR)は良好な成績が報告されているが,再脱臼症例が散見される.そこで,ABR術後再脱臼症例の特徴を明らかにするために後ろ向きに調査を行った.当院でABRを行い術後1年以上フォローした自衛隊員の症例60肩を対象とした.再脱臼は4肩(6.7%)に認めた.再脱臼群(R群)と安定群(S群)の2群に分けてR群の特徴を検討した.手術時年齢はR群が有意に若く,特に10歳代に再脱臼率が高かった.また,術後再脱臼の原因は4肩中3肩がスポーツ活動で,自衛隊の訓練によるものは1肩であった.自衛隊の所属や階級,アンカーの数や関節窩の欠損率の影響は認められなかった.すなわち,自衛隊員に対するABR術後のR群の特徴は,一般の症例と同様に10歳代の若年者が多く,スポーツによる受傷が多かった.
  • 日山 鐘浩, 吉村 英哉, 望月 智之
    2021 年 45 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     5年以上経過観察可能であった鏡視下バンカート修復術の成績を報告する.対象は2008年1月から2015年4月までに当院にて鏡視下バンカート修復術を施行された224例の内,5年以上の経過観察が可能であった121例を対象とした.男性94例,女性27例,手術時平均年齢は25.1(14-62)歳,平均経過観察期間は79.1(60-150)カ月であった.転居などにより直接検診が不可能であった症例には電話による聞き取り調査を行い,回答が得られればそれを最終経過観察とした.121例のうち,電話調査されたものが75例,外来経過観察可能であったものは46例であった.再脱臼を16例に認めた.術後一年未満に再脱臼していた症例は8例,術後1以上5年未満の間に再脱臼していた症例は4例,術後5年以上10年未満のものが3例,10年以上経過していたものは1例であった.
  • 吉村 英哉
    2021 年 45 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下Bankart法(ABR法)は,肩関節不安定症に対する標準的な術式であるが依然として術後再脱臼の問題が議論となる.ABR法症例を後ろ向きに調査して改めて再脱臼の危険因子を検討し,初回手術における症例選択や術式の工夫について考察した.当院でABR法手術を行い 2年以上経過観察した280例を対象とした.再脱臼例は34例(12.1%)であった.再脱臼発生を多変量解析で検討すると年齢,コリジョンアスリート,両側脱臼例が危険因子であった. ABR法はあくまで軟部組織の修復であるためその成否は軟部組織の状態に依存している.従って初回手術では再脱臼リスクを検討して術式を選択する必要がある.特に若年者,コリジョンアスリート,両側脱臼例などリスクの高い症例に対して,初回手術時にRemplissage法などを追加し軟部組織縫縮を強めるか,烏口突起移行術の併用を検討すべきであると考えられた.
骨折
  • 柴田 英哲, 後藤 昌史
    2021 年 45 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     2018年から2019年にかけて当院にて鎖骨骨幹部骨折に対するプレートを用いて骨接合術を行った33例のうち鎖骨単独骨折に対してプレート固定を行った26例(男性24例,女性2例)に対して上方固定(S群)と前下方固定(A群)に分けて比較検討を行った.上方固定は全てOpen Reduction Internal Fixation(ORIF)で行い,前下方固定は全てMinimally Invasive Plate Osteosynthesis(MIPO)法を用いて行った.平均年齢は S群:45.7 ± 12.4(SD)歳,A群:48.5 ± 10.6(SD)歳,骨折型分類は Robinson分類を使用し,2B1が8 例,2B2が18 例であった.調査項目は手術時間,合併症の有無,臨床評価(Quick DASH),抜釘の有無,骨癒合期間とした.平均手術時間はS群:88.4 ± 8.2(SD)分,A群:89.2 ± 6.4(SD)分 ,全例骨癒合し,術後1年時点でのQuick DASHスコアはS群:8.6 ± 11.2(SD)点,A群:1.4 ± 1.4(SD)点であった.合併症は拘縮肩(S群:1例),鎖骨上神経症状(S群:4例,A群:なし),インプラント関連症状(S群:4例),感染(A群:1例)を認めた.統計処理はstudent-t検定を用い,両群間においてQuick DASHのみ有意差を認めた(p < 0.05).鎖骨骨幹部骨折に対する前下方固定の術後成績は良好であり,上方固定と比較し合併症が少ない傾向にあった.
筋腱疾患
  • 佐原 亘, 菅本 一臣
    2021 年 45 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂患者と健常人の肩関節三次元動態を比較し,腱板断裂が肩関節動態に与える影響を検討した.対象は90° 以上挙上可能な腱板大・広範囲断裂患者(R群:8例, 9肩, 平均73歳)と健常人(N群:14例,21肩,平均27歳)とした.肩甲骨面上の自動挙上・下降動作を透視撮影し,2D/3D registration法にて動態解析を行った.肩甲骨,肩甲上腕関節の回旋,骨頭中心位置を算出し,挙上角度15° 毎にデータを補正して群間で比較した.肩甲骨上方回旋は挙上時ではR群はN群より大きい傾向にあり(P=0.098),肩甲上腕関節の外転角度は有意に小さかった(P < 0.05).しかし下降時はこれらの差は減少した.骨頭中心は挙上・下降ともにR群はN群より有意に上方に位置した(P < 0.05).腱板断裂により肩甲上腕関節での動的安定性と外転トルクが減少したため,骨頭の上方変位と肩甲上腕関節の外転角度の低下が生じ,代償性に肩甲骨の上方回旋が増加したと考えられた.
  • 佐藤 英樹
    2021 年 45 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     当院での鏡視下腱板修復術は内側列アンカー周囲への応力集中を低下させるために外側修復を追加した内側列縫合なしのスーチャーブリッジ法を考案して採用している.2015年6月から2019年4月までMRIで断裂長が3cm以上5cm未満の大断裂に対して本術式を行った42肩中,経過観察が12カ月未満の症例,術後リハビリテーションプロトコールを遵守できなかった症例を除く38肩を対象として検討した.術前MRIでの脂肪浸潤,術後1,3,6,12カ月のMRIでの修復状態,再断裂時期と形態,術前と最終観察時のJOAスコアを評価した.再断裂は4肩(10.5%)で,再断裂時期は4肩とも3カ月以内で,Cho分類type 1が2肩,type 2が2肩であった.JOAスコアは平均62点から平均91点と改善した.大断裂に対する外側修復を追加した内側列縫合なしのスーチャーブリッジ法は再断裂が少なく,臨床成績は良好であった.
  • 石垣 範雄, 畑 幸彦, 松葉 友幸, 日野 雅仁
    2021 年 45 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     腱板筋の質が腱板大・広範囲断裂の術後長期成績にどのような影響を及ぼすのかを明らかにする目的で調査した.腱板大・広範囲断裂に対し腱板修復術を施行し,術後10年以上経過した35例36肩を対象とした.術後1年時と10年時のUCLA score,関節可動域,徒手筋力,画像所見(関節症性変化, cuff integrity,腱板筋の脂肪浸潤)を調査し,2群間で比較検討した.各群間に有意差を認めなかったのはtotal UCLA score,屈曲筋力と外転筋力,cuff integrityと棘上筋の脂肪浸潤であった.術後10年で有意に悪化したのは,関節可動域,外旋筋力,関節症性変化,棘下筋と肩甲下筋の脂肪浸潤であった.今回の結果から,棘下筋と肩甲下筋の脂肪浸潤が強い場合でも,十分な骨頭の被覆ができればforce coupleが再建され,術後のtotal UCLA scoreや屈曲筋力と外転筋力が術後10年まで維持されるのではないかと考えた.
  • 太田 悟, 駒井 理
    2021 年 45 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     我々は,腱板大・広範囲断裂に対し,十分なモビライゼーションを行なって,断裂腱板の断端が大結節に届かない場合は鏡視下上方関節包再建術を,約1cm内側化した大結節に届く場合は鏡視下でのグラフト補強を選択しており,両術式の術後成績,適応について検討した.1年以上経過観察可能であった鏡視下上方関節包再建術(A法)30例グラフト補強(G法)10例を対象とし,検討項目としてJOAスコア,UCLAスコア,自動挙上角度,下垂外旋,内旋角度および術後のグラフト断裂について調査した.最終観察時のJOAスコア,UCLAスコア,挙上角度,下垂外旋内旋角度は両群共,術前後で有意な改善を認めた.グラフト断裂はA法では13.3%に見られ,G法では見られなかった.両群共術後成績は良好であリ,術中の残存腱の引き出しの程度によって,A法からG法への術式の切り替えは良い適応になると思われた.
  • 鈴木 一秀, 永井 英, 木村 亮介, 上原 大志
    2021 年 45 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な後上方の大断裂に対する棘下筋回転移行術の短期治療成績を検討することを目的とした.対象は8例(男性5例,女性3例)で,年齢は平均68.4才,術後経過観察期間は平均14.5ヵ月であった.術前MRIでは棘上筋Goutallier分類stage 3-4,棘下筋1-4の後上方の大断裂であり肩甲下筋断裂の合併を4例に認めた.手術は安里らの方法に従い施行した.平均ROM(術前,術後)は屈曲が(93° ,162° ),外旋は(31° ,43° ),平均外旋筋力は術前3.0から3.7へそれぞれ有意に改善した.最終観察時の菅谷分類はType I 5例,Type II 1例,Type III 1例,Type V 1例であり再断裂率は12.5%であった.JOA scoreは術前平均54.9から術後86.9点へ,UCLA scoreは13.8から30.9点へそれぞれ有意に改善した.棘下筋回転移行術は一時修復不能な腱板断裂症例に対する手術法として有用と考えられた.
  • 木下 周真, 小谷 悠貴, 田中 誠人, 林田 賢治
    2021 年 45 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     認知機能と鏡視下腱板修復術(ARCR)後の腱板再断裂との関連性についての報告はない.本研究の目的は高齢者における認知症スクリーニングとARCR後の腱板再断裂との関連性を検討することである.対象は当科でARCRを施行し,入院時に認知症スクリーニングを行った65歳以上の37例37肩とした.認知症スクリーニングのスコア,術前の腱板断裂長,術後1年での腱板再断裂の有無などを評価した.認知症スクリーニングの平均点は12.8 ± 3.7(SD)点であった.術後再断裂は9肩で認め,いずれも術前の腱板断裂長が3cm以上の症例であった.術前の腱板断裂長が3㎝以上の22症例のうち,スコアが12点以下の群の再断裂率は16.7%(2/12肩),13点以上の群は70.0%(7/10肩)であった(p=0.027;95%CI:0.01~0.65).腱板断裂長が大きい症例では術前の認知症スクリーニングが術後の腱板再断裂を予測する上で有用である.
  • 梶田 幸宏, 岩堀 裕介, 原田 洋平, 高橋 亮介
    2021 年 45 巻 1 号 p. 63-65
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
    【はじめに】鏡視下腱板修復術(ARCR)は良好な治療成績が報告されているが術後に肩鎖関節に痛みが出現する症例がある.
    【目的】ARCR後に発生した肩鎖関節(ACj)周囲の骨髄浮腫(BME)の頻度と臨床的特徴を検討した.
    【対象と方法】対象は術前にACjの症状がなくBMEを認めなかった患者111肩,男性60肩・女性51肩,平均年齢は63.3±8.9歳とした.術後1年経過時のMRIでACj周囲にBMEを認めたBME+群と,BMEを認めなかったBME-群に分け,患者背景(性別・年齢・利き手・断裂サイズ),手術時間,JOAスコア,再断裂率,ACj圧痛,Cross body adduction test(CBAT)を比較検討した.
    【結果】BME-群は99肩,BME+群は12肩であった.患者背景,手術時間,JOAスコア,再断裂率で有意な差は認めなかった.BME-群/BME+群のACj圧痛は22.2%/53.3%,CBATは12.1%/58.3%でBME+群において有意に多かった.
    【結語】ACj周囲のBMEは10.8%で発生しACjに関連した陽性所見は有意に多かった.ARCR後の遷延する肩の疼痛原因として留意する必要がある.
  • 原田 伸哉, 石谷 栄一
    2021 年 45 巻 1 号 p. 66-69
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     腱板修復術後の日常生活動作における棘上筋,棘下筋の筋活動を定量化した.肩に愁訴のない健常成人6名(平均年齢24.3 ± 1.8歳)の利き手を対象とした.被検筋は棘上筋,棘下筋とし,調査する生活動作の積分値を徒手筋力検査で測定した最大積分値で除した値(%MVC)を算出した.課題動作は1)洗濯物干し,2)洗髪,3)タオル絞り,4)両手鍋を傾ける,5)シャツをズボンの中に入れる動作を行なった.各動作を被験者が自然な動作で行う場合や規定した動作で行う場合など異なる動作で実施した際の筋活動量を比較した.棘上筋と棘下筋の筋活動は1),2),4)で有意に減少し,5)は棘下筋のみ有意に減少し,3)は有意差を認めなかった.生活動作様式は個人差が大きいが,脇を閉めて動作するよう意識させることが重要である.生活動作を統一すれば筋活動は安全指標である15-20%MVCまで減少し,安全性は向上すると考えられた.
  • 塩崎 浩之, 北原 洋, 吉田 謙
    2021 年 45 巻 1 号 p. 70-74
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     外傷性初回肩関節前方脱臼に伴う腱板断裂の手術成績を検討した.対象は22例,手術時平均年齢64.4歳,経過観察期間は平均30.8か月であった.棘上・棘下筋腱断裂は22例,肩甲下筋腱断裂は19例,合併損傷として神経損傷8例,関節窩前縁骨折3例であった.手術時に拘縮に対し徒手授動術や関節包切離術を施行した症例が13例あった.棘上筋・棘下筋腱断裂は鏡視下修復術21例,大腿筋膜パッチ移植術1例,肩甲下筋腱断裂は鏡視下修復術17例,大胸筋移行術1例を施行した.関節窩前縁骨折3例,HAGL lesion 1例,関節包断裂1例も修復した.腋窩神経重度麻痺1例は橈骨神経上腕三頭筋枝の神経移行術を施行した.術前後で,挙上が77°から152°,下垂位外旋が29°から44°,内旋がL1からTh11に有意に改善した.術前後でJOAスコアは45.5点が94.1点に,SANEスコアは31.6点が80.8点に有意に改善した.再断裂は22例中2例で9.1%に認めた.
  • 栫 博則, 海江田 英泰, 前迫 真吾, 海江田 光祥, 泉 俊彦, 廣津 匡隆, 藤井 康成, 谷口 昇
    2021 年 45 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
    関節鏡下腱板修復術後10年以上経過し,最終観察時直接検診可能であった23肩を対象とした.日本整形外科学会肩関節疾患治療成績(JOAスコア),自動屈曲角度とも術後1年時有意に改善し,最終観察時まで維持されていた.再断裂率は43.5%であった.腱板断裂の有無で2群に分け比較すると,2群間で手術時年齢,術後観察期間,修復方法に有意差を認めなかったが,再断裂群が術前の腱板断裂サイズが有意に大きかった.両群ともJOA スコア及び自動屈曲角度は術後1年時有意に改善し,最終観察時まで維持されていた.JOAスコアは術前後とも両群間に有意差を認めなかった.自動屈曲角度は術前,術後1年時には2群間に有意差を認めなかったが,最終観察時のみ有意差を認めた.
     関節鏡下腱板修復術の臨床成績は術後10年後も維持されており,再断裂の有無で臨床成績に有意差を認めなかった.
  • 吉村 英哉, 日山 鐘浩, 魚水 麻里
    2021 年 45 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂において層間剥離(delamination)とは断端が肉眼的に深層と浅層の二層に分かれていることと定義される.最近の基礎研究でdelaminationの深層は主に上方関節包であると考えられ,その重要性が認識されている.本研究ではdelaminationのある腱板断裂に対し各層ごとに修復を行い(layer specific repair)その結果を検証した.対象は腱板後上方断裂165例でそのうちdelaminationを認めたのは132例であった.術中に各層のmobilityを記録し再断裂を術後MRIにて評価した.術後再断裂を9例(6.8%)に認めた.浅層修復時のmobilityが再断裂に影響を及ぼす因子であったが深層のmobilityは有意な関連を認めなかった.腱板修復術において各層の修復位置や修復方向を適切に判断することが最も重要であると考えられた.
  • 福島 秀晃, 三浦 雄一郎, 甲斐 義浩, 幸田 仁志, 竹島 稔, 古川 龍平, 祐成 毅, 木田 圭重, 森原 徹
    2021 年 45 巻 1 号 p. 84-88
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     腱板広範囲断裂(Massive Rotator Cuff Tears: MRCT)の三角筋の筋活動について,コントロール群と年齢をマッチングし表面筋電図で検討した.対象は自動屈曲90° 以上可能なMRCT17名21肩(MRCT群: 年齢73.9 ± 4.8歳)および腱板損傷の無い高齢男性21例21肩(健常群: 年齢78.0 ± 4.7歳)とした.測定筋は三角筋前部・中部・後部線維とした.測定は肩関節屈曲0° ,30° ,60° ,90° を各5秒間保持とし,得られた筋電図データから筋活動比率(R-muscle値)を算出した.
     MRCT群のR-muscle値は0° -30° 間において三角筋全線維と30° -60° 間の三角筋後部線維で有意に高値(p < 0.01)であった.
     肩関節自動屈曲可能なMRCT症例は屈曲早期において三角筋全線維の高い筋活動と,拮抗筋となる三角筋後部線維の持続的な活動が特徴的であった.
  • 森 達哉, 見明 豪
    2021 年 45 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     Critical Shoulder Angle(以下CSA)において35度より大きいものは腱板断裂の危険因子と言われているが,腱板修復術後成績や再断裂に関する報告は少ない.本研究の目的は関節鏡下腱板修復術(以下ARCR)術後患者において,CSAと術後成績との関連性について調査検討することである.当院でARCRを施行し,術後1年時に,MRIにて評価した患者77例80肩を対象とした.術前評価として断裂サイズ,Global Fatty Degeneration Index(GFDI)など,術後臨床成績として術後1年JOAスコア,可動域,MRIでの再断裂などを評価した.CSAはCSA > 35群,CSA ≤ 35群に分け,再断裂は,再断裂なし群と再断裂群に分けた.再断裂の有無において,CSAは再断裂なし群34.6 ± 4.2度,再断裂群32.5 ± 3.7度で有意差を認めなかった.CSAにおいて統計学的検討を行ったところ,明らかな有意差は認めなかった.本研究の結果からは,短期的な経過においてCSAと臨床成績との関連は示唆されなかった.今後は術後単純X線写真にて評価を行うことを検討すべきであると考える.
  • 甲斐 義浩, 来田 宣幸, 幸田 仁志, 松井 知之, 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 近藤 寛美, 竹島 稔, 森原 徹
    2021 年 45 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究では,腱板断裂肩における肩甲骨の運動異常と姿勢不良との関係について検討した.対象は,地域在住高齢者363名とした.対象者は,問診と超音波診断によって,腱板断裂が検出された高齢者64名(腱板断裂群)と,腱板断裂が否定された高齢者299名(非腱板断裂群)に分類した.肩甲骨運動の評価は,下垂位および挙上時における肩甲骨の非対称性の有無を判定した.姿勢評価は,Kendall分類を用いて姿勢不良の有無を判定した.分析の結果,肩甲骨運動異常および姿勢不良の割合は,非腱板断裂群と比べて腱板断裂群で有意に高かった(p < 0.05).また,非腱板断裂群では肩甲骨の運動異常と姿勢不良の間に有意な関連が認められたが(p < 0.05),腱板断裂群では両者の間に有意な関連は認められなかった.これらの結果より,肩甲骨の運動異常と姿勢不良は,それぞれが個別に腱板断裂の有無と関連する.一方,腱板断裂肩に検出される肩甲骨の運動異常と姿勢不良は,必ずしも関連しないことが示された.
  • 大内 賢太郎, 冨岡 立, 島田 洋一
    2021 年 45 巻 1 号 p. 98-101
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術後に発症したCRPS様症状の頻度および特徴と,術後成績に与える影響を調査した.肩関節鏡視下腱板修復術を施行した50肩を対象とし,術後に手指腫脹・こわばり・可動域制限のいずれかを生じた症例をCRPS様症状陽性と定義した.対象をCRPS様症状陽性群と陰性群に分類し,年齢,性別,外傷の有無,罹病期間,糖尿病の有無,断裂サイズ,肩甲下筋腱修復の有無,手術時間,使用アンカー数,再断裂の有無について2群間で比較した.また,JOAスコアおよびshoulder36を術前,術後3・6・12か月で測定し,2群間で比較した.CRPS様症状は28%に生じていた.術前後因子はすべての項目において2群間で有意差は認めなかった.術後12か月のJOAスコアは可動域・総合項目で陽性群が有意に低値であった.また,術後12か月のshoulder36はすべてのドメインで陽性群が有意に低値であった.鏡視下腱板修復術後に発症するCRPS様症状は,術後の臨床成績および患者満足度に影響する可能性が示唆された.
  • 吉田 謙, 塩崎 浩之, 北原 洋
    2021 年 45 巻 1 号 p. 102-104
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     当科で施行した80歳以上の鏡視下腱板修復術の成績を検討した.対象は2014~2018年に手術した全20例中,術後に同側の上腕骨骨折を受傷した1例を除く19例である.手術時平均年齢82.6歳(80~87歳),術後経過観察期間は平均20か月(7~24か月)であった.棘上・棘下筋腱断裂の大きさは,小1例,中8例,大8例,広範囲1例であり,肩甲下筋腱断裂は12例(1例は肩甲下筋腱単独断裂)に認めた.17例に内科疾患の合併症を認め,高血圧15例,呼吸器疾患4例,糖尿病2例などであった.手術は鏡視下に一次修復した.可動域は術前挙上127° ,外旋28° ,内旋L2が,術後それぞれ141° ,32° ,Th11に改善し,JOAスコアは術前63.3点が術後89.7点に改善した.1例は術後3か月で再断裂が判明し術後7か月でリバース型人工関節置換術を施行した.術後の再断裂率は10.5%であった.術後合併症や全身状態の悪化は認めず,適切に患者選択を行うことで安全に良好な結果を得ることができた.
  • 廣瀨 聰明, 岡村 健司, 芝山 雄二, 杉 憲, 水島 衣美, 冨居 りら, 渡部 裕人
    2021 年 45 巻 1 号 p. 105-108
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     拘縮を伴う腱板断裂患者に対して行った鏡視下腱板修復術(ARCR)の短期臨床成績を検討した.
     対象は一次修復可能な腱板断裂に対してARCRを施行し,術後2年以上が経過した69肩である.術中麻酔下徒手検査の際に拘縮を認める症例に対しては愛護的に徒手関節授動術を行った後,ARCRを施行した.拘縮を認めなかった群48肩,徒手関節授動術を行った群21肩について術後2年時の臨床成績を比較検討した.
     可動域は屈曲,下垂位外旋,下垂位内旋とも術前は徒手関節授動術を行った群で有意に可動域が劣っていた.術後2年時には屈曲と下垂位内旋は両群間に有意差を認めなかったが,下垂位外旋は徒手関節授動術を行った群の方が,可動域が劣ったままであった.JOA スコアは,術後2年時には両群間に有意差を認めなかった.
     下垂位外旋の可動域制限を認める症例では徒手関節授動術のみならず,関節包解離術など外旋可動域を獲得する処置を追加することが望ましいと考えた.
変性疾患
  • 新福 栄治, 内山 善康, 繁田 明義, 橋本 紘行, 今井 洸, 鷹取 直希, 和才 志帆, 渡辺 雅彦
    2021 年 45 巻 1 号 p. 109-111
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     初診時臨床症状から凍結肩の病期における,神経原性疼痛(以下NeP)の頻度について調査した.2015年から2020年4月まで,当院で身体所見と画像所見から凍結肩と診断した181例(男性74例,女性107例:平均年齢59.3歳 ± 12.6)を対象とした.凍結肩の病期は,疼痛が高度で安静時痛と夜間痛を伴う炎症期(53例),疼痛は改善し可動域制限が主病態である拘縮期(128例)に分類した.NePの評価はPain DETECTを用いて初診時に調査を行った.12点以下は侵害受容性疼痛(NP群),19点以上はNeP群,13点以上18点以下を不明として評価し,両群を比較することで神経原性疼痛の頻度について調査した.統計学的検討はChi-square test, Mann-Whitney U testを使用し,p < 0.05を有意差ありとした.181例中125例(69%)はNP群であり,17例(9.4%)がNeP群であった.病期では炎症期は53例中NP群25例,NeP群16例,不明12例.拘縮期128例中ではNP群100例,NeP群1例,不明27例であり,炎症期にてNeP群が多かった(p < 0.01).
  • 池田 和大, 大西 信三, 埜口 博司, 小川 健, 牧原 武史, 小川 佳士, 渡部 大介, 道信 龍平, 照屋 翔太郎, 山崎 正志
    2021 年 45 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     関節リウマチに対する人工肩関節置換術(TSA)後の腱板広範囲断裂,上腕骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術(HA)後の結節転位2例,陳旧性肩関節脱臼に対するTSA術後の脱臼に対してリバース型人工肩関節置換術(RSA)への再置換を行った.ステムは3例で抜去し,Modular型インプラントの1例で温存した.2例でtricortical iliac bone graftingやBristow変法を追加した.術後可動域・JOA scoreは全例改善した.RSA再置換ではステムの抜去を要する場合が多く,注意を要する.
  • 吉岡 千佳, 末永 直樹, 大泉 尚美, 山根 慎太郎, 松橋 智弥, 川真田 純
    2021 年 45 巻 1 号 p. 118-121
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     小径人工骨頭置換術と腱板再建術を施行した70歳以上の腱板断裂性関節症(以下CTA)症例の長期成績を調査した.対象は12例,平均年齢75歳で,腱板再建術として広背筋・大円筋後方移行術3例,肩甲下筋腱部分移行術,上腕二頭筋長頭腱移植術を各2例,大胸筋移行術を1例に併用した.平均経過観察期間は10.2年だった.術前後JOAスコア,肩関節可動域,単純X線所見を調査した.合併症,再置換術はなかった.最終経過観察時平均JOAスコアは76.1 ± 11.9点,平均屈曲角度は122.1 ± 36.1° ,平均外旋角度は21.3 ± 12.8° とほぼ良好に保たれていた.画像所見ではlooseningは認めなかったが,glenoid wearを75%,骨吸収,骨頭上方化を58%に認めた.腱板再建術を伴う小径人工骨頭置換術は術後10年以上でも良好な肩関節機能が保たれており,高齢者のCTAに対しても有用な治療法と考えられる.
炎症疾患
  • 浜田 純一郎, 高瀬 勝巳, 藤井 康成, 乾 浩明, 小林 勉, 後藤 昌史, 塩崎 浩之, 畑 幸彦, 田中 栄, 林田 賢治, 森澤 ...
    2021 年 45 巻 1 号 p. 122-126
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     凍結肩について,AAOSの定義と分類やISAKOSの提言があり混乱がある.そこで会員に対し凍結肩のアンケート調査をおこなった.その結果,AAOSの一次性凍結肩の定義,一次性・二次性凍結肩の分類に同意する会員はそれぞれ63%,53%であった.原因不明の拘縮肩の診断名は凍結肩31%,拘縮肩22%,肩関節周囲炎16%,五十肩16%と多くの病名が使われていた.調査結果から凍結肩と拘縮肩の定義の曖昧さとAAOSの定義や分類への同意率が低いことがわかった.英語論文100編を調査するとadhesive capsulitisが45%,frozen shoulderが41%であり欧米ではこの2病名を主に使っていた.拘縮肩と凍結肩の定義を明確化するため学術委員会では,可動域制限があれば拘縮肩とし,そのうち原因不明な拘縮肩のみを凍結肩,原因の明らかな拘縮肩を二次性拘縮肩とするISAKOSの提言を採用した.
  • 太田 悟, 駒井 理
    2021 年 45 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     肩関節手術前は,関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)の症状が見られず,手術後診断基準を満たした症例について検討した.肩関節手術703件のうち,手術後に関節リウマチ分類基準(ACR/EULAR 2010)を満たした9症例(男性2例,女性7例)について検討した.
     対象例は手術時平均年齢76.6( ± 7.6)歳であり,対象外は66.5( ± 13.6)歳であった(p < 0.01).発症時期は術後平均12.3( ± 14.3)ヵ月であった.鏡視下手術と人工関節手術とで発症率に差が見られた(p < 0.01).鏡視下手術より,侵襲が大きい人工関節でRA発症例が多く見られた.より高年齢での患者に見られ,高齢発症のRAに肩関節初発例が多いことと関連すると思われた.術後1~2年はRA発症例があることを念頭に置く必要がある.
その他
  • 祐成 毅, 木田 圭重, 森原 徹, 大西 興洋, 小椋 明子, 立入 久和, 南 昌孝, 古川 龍平, 小林 雄輔, 黒川 正夫, 高橋 ...
    2021 年 45 巻 1 号 p. 132-135
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,当院における投球障害肩に対する肩関節手術の治療成績を検討することである.対象は投球障害肩と診断され手術を行った20例20肩とした.手術時平均年齢は25.2歳,性別は男性17例,女性3例,スポーツは野球19例,ソフトボール1例であった.手術は全例鏡視下で行い,術中所見,手術内容,スポーツ復帰状況を検討した.術中所見として全例関節唇損傷を認め,合併を含めSLAP損傷19例,前方損傷 3例,後方損傷18例であった.16例に棘上筋腱関節包面不全断裂,10例にSGHL/MGHL弛緩あるいは損傷,2例にBennett骨棘障害を認めた.手術は全例でデブリードマンを行い,2例に関節唇修復,6例にSGHL/MGHL修復,2例にBennett骨棘切除を追加した.復帰率は,完全復帰が55%,部分復帰が40%,復帰不可が5%であり,復帰時期は平均術後6.9ヵ月であった.完全復帰率のさらなる改善のためには,病態に応じた術式や術後リハビリテーションなど複数の課題が考えられる.
  • 鈴木 昌, 田鹿 佑太朗, 古屋 貫治, 西中 直也
    2021 年 45 巻 1 号 p. 136-138
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     投球動作の継続によりposterosuperior impingement(PSI)や後方関節窩側の形態変化が生じると指摘されているが,健常者での調査は少なく,生理的なPSIの定義は不明である.今回健常者を調査し,生理的なPSIの定義を試みた.健常成人15人30肩に両肩の超音波検査を行い,後方関節窩側の形態変化の評価と,外転最大外旋位で後方関節唇と腱板の接触形態の分類を行い,それぞれ左右差を比較した.後方関節窩側の形態変化は2肩に認め,左右差はなかった.外転最大外旋位での接触形態は,後方関節唇と腱板が変形しないものを23肩,変形するものを7肩に認め,左右差はなかった.健常者では後方関節窩側の形態変化や変形を伴う後方関節唇と腱板の接触形態にいずれも左右差は認めないことが確認された.生理的なPSIの定義は,外転最大外旋位で後方関節唇と腱板は接触するのみで変形しないことが基準となりうる.
  • 幸田 仁志, 甲斐 義浩, 来田 宣幸, 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 近藤 寛美, 竹島 稔, 森原 徹
    2021 年 45 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究では,地域在住高齢者を対象に,肩の痛みと健康関連QOLを前向きに調査することで,肩痛の改善が健康関連QOLに及ぼす影響を検討した.対象者は,肩痛を有する地域在住高齢者50名とした.肩痛は,自覚症状および他覚症状(impingement sign)を評価した.健康関連QOLの評価には,SF-8を使用し下位尺度から算出される身体的サマリースコア,および精神的サマリースコアを求めた.統計解析は,Wilcoxonの符号順位検定を用い,1年後に肩痛の症状が消失した群(改善群)と,肩痛が持続している群(持続群)のそれぞれで,各サマリースコアの値を1年前と後で比較した.自覚症状の改善群は,1年後の身体的サマリースコアに有意な増加が認められた.他覚症状の改善群も,1年後の身体的サマリースコアに有意な増加が認められた.疼痛持続群は,いずれの項目にも有意な差は認められなかった.肩痛が改善することで,身体的側面の健康関連QOLは向上する可能性が示された.
治療法
  • 前田 卓哉, 佐藤 満, 尾﨑 尚代, 田村 将希, 野口 悠, 阿蘇 卓也, 高橋 知之, 井上 駿也, 古山 駿平, 鈴木 昌, 西中 ...
    2021 年 45 巻 1 号 p. 143-148
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,リバース型人工肩関節置換術(RTSA)後の合併症の1つであるscapular notching(notch)の発生率,発生時期を調査し,notch発生の有無が術後成績に与える影響を検討し,notchの発生要因を検証することである.対象はRTSAを施行し2年以上経過観察が可能であった46例48肩である.評価項目は屈曲・外転・外旋の自動可動域(ROM),下垂位と肩甲骨面上45° 挙上位の肩甲骨上方回旋角度(Scapula index,SI)である.上記の項目を,notchあり群となし群で比較検討を行った.その結果,notchの発生率は38%であり,発生時期は術後平均10.1カ月であった.あり群の術後12カ月時屈曲と術後18カ月時屈曲・外転のROMではなし群に対し有意に小さかった.SIは下垂位,45° 挙上位の全ての時期であり群がなし群に対して大きかった.今回の結果から,notchの発生により一時的にROMは低下するがその後改善すること,また,SIが大きい場合はnotchの発生を誘発する条件の1つとなる可能性が予想された.
  • 倉茂 秀星, 瓜田 淳, 門間 太輔, 岩崎 倫政
    2021 年 45 巻 1 号 p. 149-152
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節全置換術(以下RSA)の周術期における出血量,血算の経時的変化,輸血の要否についての一定した見解は得られていない.本研究の目的はRSAにおける周術期の出血量,血算の変化および輸血リスク因子を明らかにすることである.2014年11月から2019年10月に当科でRSAを行った53肩に対して周術期の出血量,ヘモグロビン(Hb)値,ヘマトクリット(Hct)値を計測し輸血リスク因子を検討した.術中出血量163 ± 128 ml,術翌日ドレーン出血量285 ± 127 ml,総出血量542 ± 241 mlであった.Hb値,Hct値は,術前12.8 ± 2.4 g/dl,39.1 ± 17.7 %から術後3日目に9.9 ± 1.9 g/dl,30.3 ± 14.5 %まで低下し,以後は回復する傾向にあった.輸血を要したのは5肩であった.術前自動屈曲30°未満,手術時間150分以上,術翌日ドレーン出血量350 ml以上,総出血量800 ml以上が輸血リスクと判定された.自動屈曲不能な症例や手術時間が長い症例,総出血量および術翌日ドレーン出血量が多い症例では輸血の可能性があると示唆された.
  • 落合 信靖, 橋本 瑛子, 廣澤 直也, 梶原 大輔, 嶋田 洋平, 伊勢 昇平
    2021 年 45 巻 1 号 p. 153-156
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的はセメントレスショートステムのリバース型人工肩関節置換術(RSA)後の上腕骨側の画像変化を検討することである.対象はセメントレスショートステムを用いたRSAを施行し,術後1年以上経過観察可能であった56例,平均年齢77.7歳だった.検討項目は最終経過観察時の臨床成績と画像評価でNeck Shaft Angleは平均132.2° でステム挿入角度は19例が外反位,2例が内反位,35例が中間位だった.皮質骨の菲薄化は17例に認め,菲薄化が起こるカットオフ値は近位69.8%,遠位で73.5%であった.臨床成績は術前に比較し,最終経過観察時有意に改善し,菲薄化のある群なし群で差は認めなかった.本検討の結果ルースニングを認めた症例はなかったが,髄腔占拠率が高い症例では皮質骨の菲薄化を多く認めたことから,髄腔占拠率を最小限で70%以下にすることが重要と考えられた.
  • 井上 駿也, 髙橋 裕司, 前田 卓哉, 田村 将希, 阿蘇 卓也, 野口 悠, 高橋 知之, 古山 駿平, 尾﨑 尚代, 鈴木 昌, 古屋 ...
    2021 年 45 巻 1 号 p. 157-162
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節全置換術(RTSA)後6カ月時点の可動域獲得に対して,術後1カ月時点の自動挙上可動域(AEROM)および患者属性が影響するかを検討した.術後6カ月以上経過観察可能であった患者を包含した.術後6カ月のAEROMの中央値を境に良好群と不良群,原因疾患,機種間別の2群間比較を,身体機能および患者属性を変数としてそれぞれ統計解析した.また,独立変数を原因疾患,機種,術前AEROM,術後1カ月AEROM,外旋ROMとし,多重ロジスティック回帰分析を行った.51例51肩が包含され,変性疾患で術後1カ月AEROMが外傷疾患よりも高値を示した.しかし,術後1カ月AEROMのみが術後6カ月時点のAEROMに有意に関わる変数として描出された.そのカットオフ値は80° ,感度0.95,特異度0.54,曲線下面積0.82と中程度の有用性が示された.術後1カ月時点で 80° 以上のAEROMを有する患者は,機種や原因疾患に関わらず6 カ月時点で110° 以上のAEROMを獲得できる可能性が高いことが示唆された.
  • 国分 毅, 美舩 泰, 乾 淳幸
    2021 年 45 巻 1 号 p. 163-166
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節置換術(RSA)は,Grammontが当初設計したデザインから,上腕骨を外方化させるデザインに近年変遷している.本研究では,RSAにおける上腕骨外方化の効果を検討した.2014年7月以降,RSAを施行した36例(男性12例,女性24例,手術時平均年齢76.0歳)を対象とした.RSAの使用機種は,従来のGrammont型(G群)が20例で,上腕骨外方化型(L群)が16例であった.術後,臨床評価を行い,JOAスコア,自動可動域(屈曲,外転,外旋,内旋),筋力(外転,外旋)を比較検討した.JOAスコアと可動域(屈曲,外転)は両群とも有意に回復していたが,二群間に有意差はなかった.可動域の外旋は二群とも有意な改善は無く,内旋はともに有意に悪化していた.外転筋力は両群で,外旋筋力はL群のみで有意に改善し,術後1年の外旋筋力もL群が有意に大きかった.上腕骨外方化により外旋筋力が有意に改善し,上腕骨外方化の有用性が示された.
  • 橋本 瑛子, 落合 信靖, 広沢 直也, 梶原 大輔, 嶋田 洋平, 伊勢 昇平, 秋本 浩二
    2021 年 45 巻 1 号 p. 167-170
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     外旋機能低下を伴う症例におけるRSAの術後成績は不良である.術後1年以上経過観察可能だったmodified L'Episcopo法を併用したRSA35例の臨床成績を検討した.平均年齢74.0歳,術後平均経過観察期間32ヶ月だった.可動域,合併症,臨床スコア(JOA・ADLERスコア),単純X 線での腱移行部の皮質骨吸収の有無を検討した.挙上,下垂位外旋可動域は各々58.1度,0度から,133.0度,32.3度へ有意に改善した.1例で術後に脱臼をきたし再手術を要した.JOA・ADLERスコアは各々50.5点,11.6点から,87.8点,26.8点へ有意に改善した.16例に腱移行部の骨吸収を認めたが,骨吸収の有無で可動域・臨床スコアに有意差はなく,大胸筋温存群で骨吸収率は低値の傾向だった.偽性麻痺肩に著しい外旋機能低下を伴う症例に対するmodified L’Episcopo法を併用したRSAは,可動域と臨床スコアの有意な改善を認め良好な成績だった.骨吸収よる臨床成績に差を認めなかったが,長期的観点から骨吸収の少ない大胸筋温存での移行法が有用と考えられた.
  • 大西 信三, 小川 健, 埜口 博司, 牧原 武史, 池田 和大, 小川 佳士, 渡部 大介, 道信 龍平, 照屋 翔太郎, 山崎 正志
    2021 年 45 巻 1 号 p. 171-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     RSA術後の装具はADLに支障をきたすため短期間であることが望ましいが,インプラントの緩み,縫合した肩甲下筋腱の断裂が懸念される.術後2週間の装具使用で経過に問題がないか検討した.対象は通常のRSA6肩,BIO-RSA13肩,人工骨頭からRSAへの置換が1肩の計20肩である.術後から他動運動を開始,外旋は30° 以下に制限した.術後1週で外転枕を除去し自動介助運動開始,術後2週でスリング終了,制限なしで自動運動を許可した. 術後脱臼例は無く,画像上5肩にステム周囲lucent lineを認めたが,関節窩側の緩みは全例で認めなかった.自動屈曲可動域の平均は,術前58.0° ,術後1ヶ月69.0° ,2ヶ月97.3° ,3ヶ月113.3° ,6ヶ月133.5° ,1年141.0° であった.エコー検査では肩甲下筋縫合例19肩の2肩に断裂を認め,術前MRIにおいてGoutallier分類III・IVの症例であった.典型的な症例は装具使用2週間で臨床結果に大きな影響はでなかった.
  • 藤巻 洋, 中澤 明尋, 竹内 剛
    2021 年 45 巻 1 号 p. 175-179
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル 認証あり
     肩関節手術野におけるアクネ菌を含む表在細菌検出率をポビドンヨード単独による消毒を行った52例(P群)とクロルヘキシジンアルコール(CHD-A)を併用した64例(C群)で比較した.各群とも手術野を含む術側肢全体を10%ポビドンヨード液で消毒し,C群では事前にCHD-Aによる予備消毒を追加した.執刀直前に皮膚擦過により採取した検体を培養し表在細菌検出率を比較した.細菌培養陽性率はP群(69%)に比べC群(38%)で有意に低下した(p < 0.001).アクネ菌以外の一般細菌が検出されなかった患者の中でのアクネ菌検出率はP群53%(16例/30例),C群27%(13例/48例)であった(p=0.02).CHD-Aを併用した術野消毒により表在細菌検出率は低下したが,いまだ検出率は4割程度と高値であり,肩関節手術での創部感染予防のためには予防抗菌薬投与法なども含めてさらなる検討が必要と考えられた.
症例報告
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