抄録
外傷性初回肩関節前方脱臼に伴う腱板断裂の手術成績を検討した.対象は22例,手術時平均年齢64.4歳,経過観察期間は平均30.8か月であった.棘上・棘下筋腱断裂は22例,肩甲下筋腱断裂は19例,合併損傷として神経損傷8例,関節窩前縁骨折3例であった.手術時に拘縮に対し徒手授動術や関節包切離術を施行した症例が13例あった.棘上筋・棘下筋腱断裂は鏡視下修復術21例,大腿筋膜パッチ移植術1例,肩甲下筋腱断裂は鏡視下修復術17例,大胸筋移行術1例を施行した.関節窩前縁骨折3例,HAGL lesion 1例,関節包断裂1例も修復した.腋窩神経重度麻痺1例は橈骨神経上腕三頭筋枝の神経移行術を施行した.術前後で,挙上が77°から152°,下垂位外旋が29°から44°,内旋がL1からTh11に有意に改善した.術前後でJOAスコアは45.5点が94.1点に,SANEスコアは31.6点が80.8点に有意に改善した.再断裂は22例中2例で9.1%に認めた.