肩関節
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46 巻, 1 号
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学術集会発表論文
基礎研究
  • 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 甲斐 義浩, 幸田 仁志, 木田 圭重, 竹島 稔, 森原 徹
    2022 年 46 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
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    肩伸展を行う際の肩回旋肢位が肩周囲筋の筋活動に与える影響について検討した.対象は健常者8名とした.肩回旋肢位は,外旋(ER),内旋(IR),最大内旋(MIR),測定筋は三角筋後部,肩内転筋群,上腕三頭筋,僧帽筋下部とした.各筋の%MVC(%Maximum Voluntary Contraction)を各回旋肢位で比較した.三角筋後部はERがMIRやIRと比較して有意に低値であった(ともにp < 0.05).肩内転筋群ではMIRがIRやERと比較して高値であった(ともにp < 0.01).上腕三頭筋はMIRがIRやERと比較して低値であった(IR:p < 0.01,ER:p < 0.05).僧帽筋下部はERがMIRやIRと比較して高値であった(ともにp < 0.01).
     肩内転筋群がMIRで高値を示した要因は肩内旋により小結節陵が関節窩に接近することで広背筋,大円筋の肩伸展方向のベクトルが増大したことであると考えた.一方,肩内旋による肘頭の位置が上腕三頭筋による肩伸展の貢献度に関連したと考えた.肩伸展時,肩内転筋群の筋活動を高める回旋肢位がMIRであった.
診察・診断法
  • 吉岡 千佳, 末永 直樹, 大泉 尚美, 山根 慎太郎, 松橋 智弥, 久田 幸由
    2022 年 46 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     広範囲腱板断裂症例において,一次修復術を施行した症例と腱移行術を行った症例の術前MRI画像により,一次修復可否が予想可能か検討した.広範囲腱板断裂に対し直視下腱板縫a合術を施行し術後MRIで修復を確認した71例を一次修復(PR)群,腱移行術を行った47例を腱移行(TT)群とした.術前MRIは腱板断裂サイズ,関節窩上での棘上筋腱の厚さ,腱板断端位置(Patte分類),tangent sign,棘上筋,棘下筋の占拠率,脂肪変性を評価し統計学的検討を行った.腱板の内外側方向の断裂サイズ,棘上筋腱の厚さ,Patte分類で2群間に有意差を認めた.筋の占拠率,脂肪変性は棘上筋で有意差を認めた.多変量解析では棘上筋腱の厚さとPatte分類で有意差を認め,腱の厚さのカットオフ値は5.3mmだった.広範囲腱板断裂ではPatte分類stage 3,棘上筋腱の厚さが5.3mm未満の場合,腱移行術を必要とする可能性が高い.
  • 白石 勝範, 曽我 孝, 森山 翔太, 望月 由
    2022 年 46 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
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     MRI T2マッピングが凍結肩の診断に有用であるかを検討することとした.肩関節他動挙上角度が135° 以下で器質的疾患がない凍結肩28肩(FS群),拘縮がない腱板断裂14肩(RCT群),石灰沈着性腱板炎12肩(CT群),正常肩8肩(NS群) を対象としMRI T2マッピングを行った.斜位冠状断像に直径約1cmの真円を腋窩嚢の関節包周囲に設定したT2値の平均値(AT2値)を算出した.検討項目として年齢,性別,AT2値を4群間で比較した.年齢は,FS群と比較しRCT群で有意に高く,NS群で有意に低かったが,CT群との間には有意差を認めなかった.またRCT群,CT群と比較しNS群で有意に低かったが,RCT群とCT群の間には有意差を認めなかった.性別は,RCT群と比較しNS群で有意に男性が多かったが,その他の群間には有意差を認めなかった.AT2値はFS群35.0msec,RCT群28.2msec,CT群29.3msec,NS群27.7msecであった.AT2値はFS群が他の3群より有意に高かったが,その他の群間には有意差を認めなかった.凍結肩の診断にはAT2値が有用かもしれない.
検査
  • 髙橋 知之, 田村 将希, 野口 悠, 前田 卓哉, 阿蘇 卓也, 井上 駿也, 古山 駿平, 尾﨑 尚代, 古屋 貫治, 西中 直也
    2022 年 46 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
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     目的は,投球肘障害患者のゼロポジション近似肢位における肘伸展筋力(Zero肘伸展筋力)と肩甲骨周囲筋筋力との関係を調査することである.投球肘障害患者10名(14.8 ± 2.9歳)を対象とし,Zero肘伸展筋力と肩甲骨周囲筋筋力を計測した.Zero肘伸展筋力の計測肢位は肩甲骨面上で肩甲棘と上腕骨が一直線に並ぶ肢位に設定し,同肢位での等尺性筋力を計測した.肩甲骨周囲筋は僧帽筋上部,僧帽筋中部(MT),僧帽筋下部(LT),菱形筋(RB),前鋸筋の等尺性筋力を計測した.Zero肘伸展筋力と肩甲骨周囲筋筋力との関係をスピアマンの順位相関係数を用いて検討した(有意水準5%).結果,Zero肘伸展筋力とMT筋力,LT筋力,RB筋力との間にそれぞれ有意な正の相関を認めた.
  • 泉 政寛, 玉井 幹人, 伊藤 恵里子, 古畑 友基, 秋山 隆行, 池邉 智史, 馬渡 正明
    2022 年 46 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
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     海綿骨CTハンスフィールド値(以下HU値)は骨密度に高い相関性を示すといわれている.本研究の目的は,上腕骨大結節部のHU値と腱板断裂の大きさや断裂腱の脂肪変性の関係を明らかにすることである.2018年4月~2021年4月までに当院で行った鏡視下腱板修復術患者117肩を対象とした.HU値の測定は上腕骨大結節部,棘上筋停止部,棘下筋停止部の3か所で測定した.上腕骨大結節部のHU値と腱板断裂の大きさ,腱板構成筋の脂肪変性を検討した.上腕骨大結節部全体,棘上筋停止部,棘下筋停止部のHU値はそれぞれの群間で有意差は認めなかった.すべての部位にて断裂径によるHU値に有意な差は認めなかった.脂肪変性によるHU値は棘上筋停止部,棘下筋停止部ともに脂肪変性のグレードが高いほどHU値が低値であった. 断裂して長時間経過した脂肪変性の強い腱板断裂患者において大結節部に長期間機械的な刺激が加わらないことが,大結節部の骨吸収を増加させると考えられた.
脱 臼
  • 田中 宏茂, 三幡 輝久, 長谷川 彰彦, 根尾 昌志
    2022 年 46 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     野球選手の外傷性肩関節前方不安定症に対する鏡視下手術の治療成績を調査した.外傷性肩関節前方不安定症に対して鏡視下手術を施行した野球選手12例12肩(全例男性,手術時平均年齢20.5歳)を対象とした.投球側6肩(捕手1肩,内野手3肩,外野手2肩),非投球側6肩(投手1肩,捕手1肩,内野手3肩,外野手1肩)であった.12例全例に鏡視下Bankart修復術を行い,大きな肩甲骨関節窩骨欠損を認めた1肩には鏡視下Bristow法を追加した.術前はanterior apprehension testが全例で陽性であったが,術後は全例で陰性化した.術後に再脱臼を認めた症例はなかった.術後に手術側の肩関節90度外転位での外旋可動域は非手術側よりも有意に減少していたが,全例術後に競技復帰した.野球選手において,投手の非投球側受傷例と野手に対しては,鏡視下Bankart修復術および鏡視下Bankart-Bristow法は競技復帰の面においても有用な術式であると思われた.
  • 山田 均志, 木村 亮介, 鈴木 一秀
    2022 年 46 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下Bankart&Bristow変法(以下ASBB法)の術後肘屈曲筋力を経時的に測定し,移行した烏口突起の骨癒合例(以下早期癒合群)と遷延癒合例(以下遷延群)で術後肘屈曲筋力の回復過程に影響が生じるか調査することを目的とした.対象は利き手側に対しASBB法を施行し,術前と術後3-5ヵ月まで経時的に肘屈曲筋力を計測できた20代までの男性35例である.徒手筋力計にて等尺性肘屈曲筋力を計測し,早期癒合群と遷延群の健患比を算出し比較検討を行った.肘屈曲筋力は各時期において早期癒合群と遷延群の2群間で有意差を認めなかった.遷延群ではスクリューのバックアウト例を除き上腕二頭筋短頭の筋収縮の牽引力に対して骨癒合強度が保たれていること,遷延群でも早期癒合群と同時期から同様のトレーニングを行ったことにより2群間で肘屈曲筋力の差が生じなかったと考えられ,烏口突起の遷延癒合例は肘屈曲筋力低下の原因とはならなかった.
  • 石毛 徳之, 荻野 修平, 石井 壮郎, 黒田 重史
    2022 年 46 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     当院にて肩甲骨関節窩骨折を伴う肩関節脱臼骨折に対し手術を施行した9例9肩について調査した.平均年齢57.1歳,男性4名女性5名,右6肩左3肩,平均経過観察期間は12.2カ月であった.罹病期間,骨折型,骨欠損部の大きさ,脱臼整復の成否,上腕骨骨折の有無,腱板断裂の有無,術式,Rowe scoreを調査した.罹病期間は平均1.2カ月,骨折型は全てIdeberg分類TypeⅠa,欠損は平均25.9%,整復可能6肩,不能3肩であった.腱板断裂は5肩で確認された.5肩で関節鏡視下手術,4肩で直視下手術が施行された.最終経過観察時のRowe scoreは平均84.4点であり,再脱臼例はなかった.整復不能3肩では術後可動域は有意に小さく,Rowe scoreも68.3点で低値であった.陳旧性肩関節脱臼では関節周囲組織が癒着し,関節外処置が必要とされる.肩関節脱臼骨折に際し可及的早期に関節脱臼を整復することが必要と考えられた.
  • 中村 英資, 飯澤 典茂, 白尾 宏明, 米田 稔, 眞島 任史
    2022 年 46 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
    肩甲骨関節窩前縁骨折に対して,DAFF法を用いた関節鏡視下骨接合術を行なっている.本研究の目的は治療による臨床成績,CT画像による評価をすることである.
     対象は2017年4月から2020年11月までに肩甲骨関節窩前縁骨折に対してDAFF法を用いた関節鏡下骨接合術を行い,術後6か月以上経過した10例. 臨床成績, 術直後と最終時のCT像で骨片の頭側と尾側のstep off, gapの変化,最終時の骨癒合状況を評価した.
     JOAスコアは平均91.6点で術後脱臼例や合併症はなかった.CT像での関節窩gapは頭側が有意に減少していた.術直後から最終時にstep offが1mm以上の変化を認めたものは3例であった.
     gapの減少は, 骨片の位置の変化や骨増生の影響の可能性がある,1mm以上の矯正損失は,粉砕や骨質不良による固定力低下が原因である可能性がある.
     肩甲骨関節窩前縁骨折に対するDAFF法を用いた関節鏡下骨接合術は,良好な臨床成績と全例に骨癒合が得られていた.
  • 伊藤 岳史, 岩堀 裕介, 山本 隆一郎, 花村 浩克
    2022 年 46 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下Bankart修復術・直視下Bristow変法複合術後にスクリューのバックアウトを認めた6例を報告する.全例男性,平均年齢21.5(17-34)歳,ラグビー選手5例,自衛官1例だった.初回術後平均11.6(6-24)週で,中空スクリュー(CCS)のバックアウトを認めた.2肩にCCSによる移植骨片の再固定を行ったが,再びバックアウトした.6肩中3肩に緩んだCCS先端の動きが影響したと考えられる肩甲骨頚部の骨吸収を生じた.5肩にCCS抜釘を行い,そのうち1肩に骨吸収部の掻爬・人工骨充填を行った.最終観察時,全例で肩関節不安定性を認めず,術前49.0点であった平均JSS-SISは最終観察時92.0点と有意に改善した.スクリューバックアウトへの対処法には現状でコンセンサスがない.CCSでの再固定では固定性を得られず今後の課題である.緩んだCCSにより肩甲骨頚部に骨吸収を生じる場合は一定期間を経過後に抜釘が望ましい.烏口突起骨片が癒合不全でも不安定性の再発はなかった.
  • 松葉 友幸, 高橋 憲正, 松木 圭介, 森岡 健, 上田 祐輔, 星加 昭太, 濱田 博成, 上條 秀樹, 出口 友彦, 菅谷 啓之
    2022 年 46 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     外傷性肩関節後方不安定症は比較的稀な疾患であるが,痛みや機能障害により,しばしば外科的治療を要する.鏡視下手術を施行した14症例の臨床所見と画像所見を調査した.平均年齢21歳で,術後観察期間は3カ月から39カ月(平均13.5カ月)であった.CTの関節窩骨形態は骨欠損なし: 2例,後方骨浸食あり: 5例,後方骨性バンカート損傷あり: 5例でreverse Hill-Sachs 損傷を8例に認めた.MRAでは7例に後方関節唇損傷,10例に後方関節包の拡大が同定可能だった.術式は関節唇修復11例,後方HAGL修復1例,後方関節包断裂修復2例だった.ROWE スコアは術前47.5点から術後89.2点へ有意に改善した.スポーツ復帰状況は完全復帰3例,不完全復帰2例,復帰断念1例(バスケットボール)だった.外傷性肩関節後方不安定症は鏡視下修復術によって肩関節機能が改善し,スポーツへの競技復帰が可能だった.
  • 野口 悠, 田村 将希, 阿蘇 卓也, 高橋 知之, 井上 駿也, 古山 駿平, 前田 卓哉, 尾﨑 尚代, 古屋 貫治, 西中 直也
    2022 年 46 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究は,肩関節多方向不安定症(multidirectional instability : MDI)例の上肢挙上動作の上位胸郭運動量を含めた動態を調査することを目的とした.対象はMDI症例8名8肩,対照群は当研究所のメディカルチェックを実施した健常若年者18名18肩とした.計測にはX線前後像(T-view撮影法)を用い,上位胸郭運動量,鎖骨挙上角度,鎖骨と関節窩の作る角度,関節窩の上方回旋角度,関節窩に対する上腕骨の外転角度(GH角),上腕骨の外転角度を計測した.上位胸郭運動量,鎖骨挙上角度,関節窩の上方回旋角度は,MDI症例で有意に減少し(p=0.008,p=0.048,p=0.005),GH角は,有意に増加した(p=0.003).MDI症例では,肩甲上腕関節だけでなく上位胸郭運動量を含めた肩甲帯運動の影響を考慮して評価する必要がある.
  • 中井 大輔, 小林 尚史
    2022 年 46 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下バンカート修復術の再脱臼例の再手術時鏡視所見から特徴的な病変を検討した.非再発群(341 肩)と再手術群(10肩)で比較すると,再手術群では有意に初回手術時年齢が若年であった.再手術群の初回手術時の平均年齢は16.7 ± 2.4(12-17)歳,再手術時の平均年齢19.5 ± 2.8(14-24)歳,平均経過観察期間は,52.0 ± 17.2カ月(34-86)であった.初回手術時鏡視所見で,バンカート病変米田分類type2が6肩,type3が6肩,type4と5は各1肩であった.再手術時鏡視所見では全肩米田分類のType3を認めた.特徴的な所見として,関節唇靭帯複合体が関節窩から剝脱するように関節窩側に落ち込み,再建関節唇は平坦化していた.
  • 飯澤 典茂, 米田 稔, 白尾 宏朗, 中村 英資, 眞島 任史
    2022 年 46 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下関節窩人工骨移植術後の人工骨の位置変化や骨癒合,周囲の骨反応をCT画像を用いて評価した.10例を対象とし,人工骨の偏位と角度を計測し術後早期と術後6か月,および最終観察時で比較した.また,人工骨の上中下,さらに外側と内側に6等分し,各部位での骨癒合状況を確認し,人工骨周囲に骨形成が生じているかを検討した.
     人工骨の平均内方偏位は術後早期が上方1.3mm, 中央0.8mm,下方1.0mm,術後6か月で各2.2mm, 1.7mm,2.0mmと上方と中央部で有意に偏位していた.角度は術後早期平均18度が6か月で13度と変化していたが有意差はなかった.偏位と角度はともに6か月以降の変化はなかった.癒合状況は外側上方: 80%,中央100%,下方50%,内側上方10%,中央70%,下方10%に骨癒合を認めた.人工骨周囲の骨形成は特に関節窩側で生じていた.
     鏡視下関節窩人工骨移植術後初期に転位を認めるものもあったが,中央部では全例骨癒合し,関節窩が拡大,内方偏位した人工骨を被覆するかのように骨形成が生じていた.
骨折
  • 嶋田 洋平, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 広沢 直也, 伊勢 昇平, 稲垣 健太, 平岡 佑
    2022 年 46 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
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    【はじめに】
    AEQUALISTM IM Humeral Nailはストレートの形状で小さく短いため低侵襲で手術可能と考えられる.上腕骨頚部骨折に対して上記Nailを使用した経皮的髄内釘固定術の使用経験を報告する.
    【対象と方法】
    対象は上腕骨頸部骨折Neer 2-part骨折(AO/OTA分類type11A2.1)の内反型4例.平均年齢67 ± 6.3(SD)歳,平均経過観察期間は12ヶ月から16ヶ月(平均13ヶ月).Nailの刺入点は骨頭の内反が著明な症例に対してNeviaser portalから刺入した.術後可動域,臨床スコア,単純X線像における骨癒合の有無,術前後の頚体角度,合併症,術後超音波,MRIで腱板の評価を行った.
    【結果】
    平均術後可動域は自動前方挙上137 ± 20(SD)度,下垂位外旋45 ± 12(SD)度,結帯Th12 ± 1(SD)レベルであった.術後平均臨床スコアは,JOAスコアは85 ± 10.3(SD)点,UCLAスコアは33 ± 2.9(SD)点,Constantスコアは83 ± 9.3(SD)点であった.全例で骨癒合が得られ,頚体角度は術前92 ± 27.2(SD)度から術後128 ± 10.3(SD)度に改善した.合併症も認めず,全例腱板損傷を認めなかった.
    【結語】
    AEQUALISTM IM Humeral Nailを使用した経皮的髄内釘固定術は全例で骨癒合を認め,腱板への侵襲を回避でき良好な短期成績であった.
  • 秋本 浩二, 服部 史弥, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 西須 孝
    2022 年 46 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨2-Part外科頚骨折に対する良好な手術成績の報告は散見されるが,時に合併症を経験することがある.今回,上腕骨2-Part外科頚骨折37例(ロッキングプレート[LP]群22例,髄内釘群15例; 平均手術時年齢67.1歳; 平均経過観察期間13.3か月)の臨床成績,画像所見を調査し,合併症との関連を評価した.臨床成績はLP群と髄内釘群に有意差はなく,全例骨癒合し,骨頭壊死は認めなかった.合併症はLP群の7例(32%),髄内釘群の4例(27%)に認め,内訳は前方挙上90° 未満の拘縮6例(LP5例,髄内釘1例),上腕骨頭が20° 以上の内反再転位した自動外転90° 未満の外転不全3例(LP2例,髄内釘1例),NRS4以上の疼痛が残存した腱板断裂を合併した髄内釘2例であった.上腕骨2-Part外科頚骨折の術後合併症は決して少なくなく,慎重に経過観察を行う必要があると考えられた.
  • 菅野 敦子, 相澤 利武
    2022 年 46 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨近位端骨折受傷前・受傷後の他の骨折,その誘因とされる骨粗鬆症の加療歴を調査した.2016年4月から2019年3月に軽微な外傷による上腕骨近位端骨折でいわき市医療センターを受診した50歳以上の男性24例,女性110例が対象である.18.7%で骨折の既往があり,4.4%で同時に他の骨折を合併していた.11.9%でその後別の骨折を起こしていた.時期を問わず,大腿骨近位部,脊椎などの骨粗鬆症に関連する骨折が多くを占めた.その後の骨折には対側上腕骨近位端骨折やインプラント周囲骨折症例もみられた.骨粗鬆症の過去の治療歴は16.4%にとどまっており,新たに骨粗鬆症治療が開始になっても4か月程度で中断されている症例がほとんどであった.一般的に一度脆弱性骨折を起こすとまた骨折する危険性は高いといわれているが,上腕骨近位端骨折も例外ではなく,骨粗鬆症を考慮した精査・加療が必要である.
  • 伊勢 昇平, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 広沢 直也, 梶原 大輔, 嶋田 洋平, 稲垣 健太, 平岡 祐
    2022 年 46 巻 1 号 p. 75-77
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     不安定型鎖骨遠位端骨折に対する鏡視下烏口鎖骨靭帯再建術の成績を検討した.対象は2014年2月~2021年3月の鎖骨遠位端骨折に対して鏡視下烏口鎖骨靭帯再建術を施行し1年以上経過観察した16例である.平均年齢46.5(18~89)歳,男性14例,女性2例で右6例,左10例である.骨折型は全例Neer type IIで,臨床成績は骨癒合,インプラント脱転,骨癒合期間と鎖骨,烏口突起の骨孔拡大,矯正損失を評価した.術中所見で合併損傷,最終診察時の可動域(前方挙上,下垂外旋,内旋),JOA, UCLA, Constantスコアを評価した.平均観察期間は17.7ヵ月,平均骨癒合期間は6.4ヵ月で全例骨癒合が得られた.骨孔拡大は鎖骨8例,烏口突起5例に認め,矯正損失は3例に認めた.術中合併症として腱板断裂2例,SLAP損傷5例,肩関節拘縮1例を認めた.平均可動域は前方挙上161度,下垂外旋54度,内旋T9であり,平均JOA 97点,UCLA 34点,Constant 97点であった.本法は成績良好であり合併損傷にも対応できる有用な術式と考えられた.
筋腱疾患
  • 幸田 仁志, 甲斐 義浩, 来田 宣幸, 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 近藤 寛美, 竹島 稔, 森原 徹
    2022 年 46 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究では,高齢者における腱板断裂と肩こり症状および姿勢不良との関係について検討した.対象は,地域在住高齢者215名とした.腱板断裂の診断には,超音波診断装置を用いた.肩こり症状は,調査時点から過去1か月の自覚症状の有無を聴取した.姿勢アライメントの分類には,Kendall分類を用いた.統計解析にはχ2検定を用い,腱板断裂,肩こり症状,不良姿勢の三者間の関係性を分析した.また姿勢不良を調整変数とし,肩こり症状と腱板断裂との関連を検討した.肩こり症状は,腱板断裂,姿勢不良との間に有意な関連は認められなかった.腱板断裂は姿勢不良との間に有意な関連が認められた.良姿勢群において,肩こり症状と腱板断裂との関係を分析した結果,両者に有意な関連が認められた.一方で,姿勢不良群では,両者間に有意な関連は認められなかった.良姿勢であるにも関わらず肩こり症状を訴える高齢者には,腱板断裂が検出される割合が高いことが示された.
  • 鈴木 志郎, 二村 昭元, 鏑木 秀俊
    2022 年 46 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な腱板広範囲断裂に対する術式として,近年,本邦で注目されている棘下筋回転移行術を施行したので,その治療成績を検証し,報告する.対象は,棘下筋回転移行術を施行し1年以上経過観察し得た腱板広範囲断裂5例5肩で,男性3肩女性2肩,手術時平均年齢は66歳,術後平均観察期間は19.8カ月であった.肩関節自動可動域は,術前の平均がそれぞれ,前方挙上119.0 ± 57.2度,外転111.0 ± 55.0度,下垂位外旋47.0 ± 22.2度,内旋Th8 ± 4.1レベルであったが,最終観察時の平均はそれぞれ,前方挙上153.0 ± 30.7度,外転156.0 ± 26.1度,下垂位外旋38.0 ± 18.9度,内旋Th10 ± 2.0レベルとなり,前方挙上(p=0.04),外転(p=0.03)が有意に改善した.JOAスコアは,術前平均62.3 ± 14.3点が,最終観察時平均87.8 ± 9.8点へ有意に(p=0.02)改善した.単純レントゲン評価による肩峰骨頭間距離は,術前平均5.0 ± 2.1mmが,最終観察時平均7.9 ± 2.9mmに有意に(p=0.01)増加した.MRIによる画像評価で,最終観察時までに,術後再断裂をみとめた症例はなかった.棘下筋回転移行術は,一次修復不能な腱板広範囲断裂に対する有用な治療選択肢の一つと考えられる.
  • 国分 毅, 美舩 泰, 乾 淳幸
    2022 年 46 巻 1 号 p. 88-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     大・広範囲腱板断裂に対して腱板修復部を大腿筋膜で補強するgraft augmentation(GA)法術後の再断裂症例を良好修復症例と比較し臨床成績を不良にしている要素を検討した.大・広範囲断裂に対してGA法を行い2年以上経過観察可能であった43例を対象とした.術後7例に再断裂を認め,再断裂群(R群)と良好修復群(I群)とを比較した.JOAスコアとConstantスコアは,両群とも術後有意に改善するも,二群比較ではR群の方が有意に低かった.疼痛と機能においても術後有意に改善するも,二群比較では有意差はなかった.可動域と筋力に関しては,R群の回復には有意差が見られず,術後の二群比較では外転筋力はR群で有意に低値であった.再断裂しても疼痛は改善し機能的にも回復したのは,術後安静や適切なリハビリテーションが奏功したものと考える.しかし,筋力の改善は見られず,自動可動域も不良となり,総合的な臨床成績が不良になったと推察する.
  • 秋山 太郎, 高橋 憲正, 松木 圭介, 佐々木 裕, 菅谷 啓之, 渡海 守人, 落合 信靖
    2022 年 46 巻 1 号 p. 92-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     肩甲下筋腱断裂の診断は容易でないことが多く,しばしば見逃されて持続する肩関節痛の原因となると報告されている.本研究の目的は,身体所見,超音波検査,MRIの肩甲下筋腱断裂に対する感度・特異度を検討することである.対象は腱板断裂に対して関節鏡視下手術を実施し,上腕二頭筋長頭腱の固定または切離術を行った81肩とした.術前にbelly press test,lift off test,bear hug test,MRI読影を単一検者が行った.超音波検査は術前に放射線技師が実施した.肩甲下筋腱断裂の有無は術中に肩甲上腕関節側および肩峰下滑液包側から観察して判断した.術中所見をもとに各身体所見,画像所見の感度・特異度を検討した.各身体所見,画像所見の感度・特異度はそれぞれ38-62%,36-80%であり,感度・特異度ともに良好な検査は存在しなかった.現状では肩甲下筋腱断裂の診断は包括的に行われる必要があることが示唆された.
  • 石谷 栄一, 原田 伸哉
    2022 年 46 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     肩腱板広範囲断裂症例に対する棘下筋回転移行術(ISP移行術)の術後2年成績を調査し,この術式の特徴を検討した.術後6ヶ月,12ヶ月,24ヶ月の検診が行えた19例(男性13例,女性6例,平均年齢69.5歳)を対象にした.調査項目は可動域(挙上, 外旋, 内旋),筋力(挙上,外旋,内旋),JOAスコア,Shoulder36,Sugaya分類とした.術前に対して術後の各時期を多重比較検定した.再断裂(Sugaya分類タイプ4 & 5)率は5.3%であった.疼痛が軽減するためJOA, Shoulder36スコアは術後6ヶ月から改善した.しかし,Sugaya分類タイプ1 & 2とタイプ3では機能改善に大きな違いがあった.挙上可動域の改善はタイプ1 & 2が6ヶ月に対してタイプ3は24ヶ月と遅延した.挙上・外旋筋力はタイプ1 & 2が改善するのに対してタイプ3は改善しなかった.ISP移行術は再断裂率の少ない有用な術式であった.可動域,筋力ともに挙上は改善したが回旋の改善はなく挙上機能を改善させる術式だと考えられる.
  • 奥原 一貴, 三好 直樹, 入江 徹, 伊藤 浩
    2022 年 46 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂に対する腱板修復術および腱板再建術の術後長期成績を評価した.術後10年以上経過観察可能であった34肩について,術前,術後平均2年(術後短期)および最終観察時(術後長期)の肩関節可動域およびJOAスコア,術後短期と術後10年経過時点のMRIでの再断裂の有無,筋萎縮,脂肪変性を評価した.小~大断裂群では可動域およびJOAスコアが術後有意に改善し,長期経過時点でも成績が維持されていた.広範囲断裂群では可動域の改善は限定的であったが,JOAスコアは術後有意に改善しその後も維持されていた.再断裂を7肩に認めたが,再手術を要した症例は2肩のみであり,再断裂を生じても臨床成績に与える影響は少ない可能性が示唆された.
  • 大石 隆幸, 田崎 篤, 目黒 智子
    2022 年 46 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,単純X線を用いた鏡視下肩峰外側切除(以下ALA)のシミュレーション結果を,CTデータを用いた3Dモデルによるシミュレーション結果と比較することである.Critical shoulder angle (以下CSA)が35° 超であり,ALAの適応と判断した13例13肩を使用した.X線におけるシミュレーション前のCSA(以下XPCSA),肩峰4mm幅切除としたALAシミュレーション後のXPCSAを計測して,それらを3Dモデル上でのシミュレーションのCSA計測値(以下CTCSA)と比較した.シミュレーション前平均XPCSAは38.7 ± 3.0°(SD),CTCSAは39.5 ± 2.9°(SD)であり有意差を認めなかった(p = 0.37).4mm幅ALAシミュレーション後の平均XPCSAは34.8 ± 2.9°(SD),CTCSAは34.6 ± 2.8°(SD)でこちらも有意差を認めなかった(p = 0.84).CSAにおいて,単純X線の評価値と3DCTモデルの切除前後のALAシミュレーションの結果に有意な差異を認めなかった.ALAのCSAにおいて,単純X線と3DCTを比較して,その正確性に差がなかった.
  • 日野 雅仁, 畑 幸彦, 石垣 範雄
    2022 年 46 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂修復術施行例における反対側肩の腱板損傷の関連因子を明らかにする目的で調査を行った.片側肩の腱板修復術施行例892例を術前超音波検査で反対側肩の腱板不整像を認めた不整群567肩と腱板不整を認めなかった正常群325肩の2群に分けて調査を行った.不整群は正常群よりも手術時平均年齢が有意に高く、手術側の腱板断裂サイズが有意に大きかった.性別,利き手側,外傷の有無,術前の臨床所見,肩関節機能評価は2群間で有意差を認めなかった.手術時年齢と断裂サイズで3群に分けて比較すると,70歳以上,断裂サイズがlarge tear以上で反対側肩の腱板不整を有意に多く認めた.性別,利き手側,外傷の有無は直接的な関連因子ではなかった.今回の結果から,70歳以上の高齢者で,断裂サイズがlarge tear以上の症例に対しては,反対側肩の腱板評価を積極的に行ったほうが良いと思われた.
  • 杉森 一仁, 須澤 俊
    2022 年 46 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     肩関節鏡視下腱板修復術を施行した患者において,単回,あるいは持続斜角筋間ブロック,またカクテル注射の疼痛軽減効果、術後臨床成績について検討した.156肩(男性88肩,女性68肩,平均年齢66.0 ± 8.9歳)を対象とした.断裂サイズで比較すると,術後7日までのVASは大断裂群において有意に高かった.術後1日におけるVAS平均値は小断裂群においては各疼痛コントロール法で有意差を認めないが,大断裂群においては単回群56.3mm,持続群31.8mm,カクテル群40.4mmであり持続群が単回群,カクテル群に比べ有意に低値であった.術後6ヶ月,12ケ月の時点においてJOAスコアの痛み,機能が持続群が単回群,カクテル群にくらべ有意に高値であった.大断裂以上の断裂サイズでは術後の痛みが強く,かつ持続ブロックにより有効に除痛を得ることができた.また痛みコントロールが良好であると術後の機能が良好に改善することが予想される.
  • 落合 信靖, 橋本 瑛子, 廣澤 直也, 嶋田 洋平, 伊勢 昇平, 稲垣 健太, 平岡 祐
    2022 年 46 巻 1 号 p. 120-123
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     腱板修復術後再断裂例に対するリバース型人工肩関節置換術(以下RSA)では偽性麻痺肩例では良好と報告されているがいまだ不明な点が多い.本研究の目的は腱板断裂に対するPrimary RSAと腱板修復術後再断裂例に対するSecondary RSAの術後成績を比較検討することである.Primary RSAを施行した151肩とSecondary RSAを施行した24肩を対象とし,臨床成績としてJapanese Orthopaedic Association(JOA)スコア,University of California at Los Angeles score(UCLA)スコア,Constantスコア,可動域として自動前方挙上角度,自動外旋角度,結帯,手術時間,術後合併症を評価した.両群ともに術前に比較し術後前方挙上,外旋,臨床スコアは有意に改善していた.2群の比較では手術時間のみPrimary RSA群の方が有意に短かった.合併症に関してはSecondary RSA群で感染を1例認めたが発生率に関して有意差は認めなかった.腱板修復術後再断裂例に対するRSAはPrimary RSA群と比較しても臨床成績に差はなく,改善率も良好であり,高齢者の腱板修復術後再断裂症例ではRSAが第一選択となりうると考えられた.
  • 大前 博路
    2022 年 46 巻 1 号 p. 124-128
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     Onlay型リバース型人工肩関節全置換術を行った54肩を用いて術後の外方化,下方化の程度と,術後1年時の臨床成績について検討した.術後X線画像を用いて,Boutsiadisらの報告したlateralization shoulder angle(LSA)とdistalization shoulder angle(DSA)を計測した.LSAは88 ± 6° ,DSAは49 ± 8° であった.術後1年時の臨床成績(自動屈曲,外旋,内旋可動域,JOAスコア,Constantスコア,Shoulder36 V.1.3の各ドメイン)は内旋可動域以外の全項目で術後有意に改善し,内旋可動域は術後有意に悪化していた.LSA値と疼痛ドメイン変化量との相関関係は認めなかった.また,LSAが95° 以上の10肩とLSAが80° 以下の12肩の2群間における疼痛ドメイン変化量にも有意差を認めなかった.
  • 島田 憲明, 井上 純一, 武井 良太, 税田 和夫
    2022 年 46 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術(ARCR)後に再断裂をきたした例にリバース人工肩関節置換術(RSA),鏡視下上方関節包再建術(ASCR)を施行し,その臨床成績を検討した.対象は術後再断裂症例に対し施行したRSA11例とASCR8例である.両群を術前後での疼痛スケール,JOAスコア,可動域で比較した.また比較対照群として同時期に初回手術として施行した同術式の症例群とも臨床成績を比較した.結果は両群とも全項目で術後有意な改善がみられた.初回手術群と比較すると,RSA群は同等の結果が得られていたがASCR群は有意に臨床成績が劣っていた.ARCR後再断裂例に対しRSA,ASCRともに術後改善が見込める方法である.両術式の術後成績を単純に比較するとRSAがより安定していたが,症例も少なく,今後も検討が必要である.
変性疾患
  • 水野 直子, 小泉 宏太
    2022 年 46 巻 1 号 p. 133-137
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     摩擦型のScapular notchingは,伸展,外旋でのscapular impingementが原因で生じる.下方偏心型glenosphereは,下方にオフセットが付いており,glenoid inferior overhungを提供できるインプラントである.本研究ではBIO-RSAに設置した下方偏心型glenosphereのimpingement free ROMを評価し,Scapular notchingの予防に有効か否かを検討した.対象は変形性または腱板断裂性肩関節症30肩(男性20肩,女性10肩)である.三次元術前計画ソフトを用いて,RSAのインプラントを仮想設置した.上腕骨側は,inlay型とonlay型2種類,関節窩側はBIO-RSAを想定し,glenosphereは通常型36mm径と下方偏心型36mm径を設置した.上腕骨インプラント2タイプ,glenosphere 2タイプ,それぞれの組み合わせでの伸展,外旋をシミュレーションし,glenosphere 2タイプ間で比較検討した.その結果,Inlay型,onlay型いずれも,伸展,外旋共に下方偏心型glenosphereが有意に大きかった.これより,BIO-RSAに設置した下方偏心型glenosphereはscapular impingementを起こしにくく,摩擦型Scapular notchingの予防に有効である可能性が示唆された.
  • 服部 史弥, 高橋 憲正, 松木 圭介, 佐々木 裕, 菅谷 啓之, 渡海 守人, 落合 信靖
    2022 年 46 巻 1 号 p. 138-141
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,75歳以上の高齢者に対する鏡視下腱板修復術(ARCR)の臨床成績を調査することである. 2016年1月から2020年8月にARCRを行った1505肩のうち,75歳以上で術後1年以上の経過観察が可能であった63肩を対象とした.術前後の可動域(屈曲,外旋,結帯),日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA score), University of California at Los Angeles shoulder rating scale(UCLA score)および術後1年のMRI所見を調査し,再断裂群と修復群で成績を比較した.再断裂を22肩(35%)に認めた.可動域は修復群で全て術後有意に改善したが,再断裂群では有意な改善はなかった.臨床スコアは両群で術後に改善を認めたが,術後スコアは再断裂群より修復群で有意に高かった.75歳以上の高齢者におけるARCRでは過去の報告と比較して再断裂率は70歳未満より高かったが,術後UCLA scoreは70歳未満と同等であった.ARCRは75歳以上の高齢者の一次修復可能な腱板断裂に対しても有用である.
  • 呉屋 五十八, 山口 浩, 当真 孝, 津覇 雄一, 森山 朝裕, 西田 康太郎
    2022 年 46 巻 1 号 p. 142-145
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     乳がん術後の肩関節機能障害発生例において当院でリハビリテーション(リハ)介入を行った治療成績を調査した.乳がん術後に肩関節機能障害を発生し,リハ介入した10例10肩(全例女性,右3肩,左7肩,手術時年齢平均48.3歳,術後当科介入開始時期平均5.7ヵ月,平均経過観察期間23.9ヵ月)を対象とした.手術の内訳は,乳房全切除術5肩,乳房温存術5肩,その中でインプラントを用いた乳房再建(再建)術は4肩(乳房全切除術3肩,乳房温存術1肩)に行われていた.リハ介入前後で肩関節可動域,徒手筋力検査(MMT),Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand(DASH) score を調査した.介入前後での乳房全切除術の屈曲,外旋および乳房温存術の外旋,再建術有り群の屈曲,外旋,再建無し群での屈曲,外旋,DASH scoreで有意に改善した.また,介入前の内旋MMTでは再建術有り群は無し群より有意に低値だった.乳がん術後の肩関節機能障害に対してリハ介入は有効であると思われた.
  • 梶原 大輔, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 広沢 直也, 嶋田 洋平, 伊勢 昇平
    2022 年 46 巻 1 号 p. 146-151
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     難治性肩石灰性腱炎に対する集束型体外衝撃波療法(以下ESWT)やエコーガイド下ニードリング法(以下UGN)の治療成績は共に良好と報告されるが,併用療法の治療成績の報告は少ない.本研究の目的は難治性肩石灰性腱炎に対するESWT単独群と,ESWTとUGN併用群の治療成績を比較検討することである.対象は半年以上の罹病期間を有する難治性肩石灰性腱炎592人633肩(単独群544肩,併用群89肩)とした.検討項目は単純レントゲン上の石灰消失率,臨床スコア,疼痛VAS,治療回数を評価した.石灰消失率は単独群89.5%,併用群98.9%と併用群で有意に高率だった.臨床スコアと疼痛VASは初診時から最終経過観察時で両群共に有意に改善した.最終経過観察時のJOAスコアと圧痛の疼痛VASは併用群で有意に良好だった.治療回数は単独群4.7回,併用群3.5回であり併用群で有意に少なかった.併用群は単独群に比べ有意に石灰消失率・臨床成績共に良好で治療回数が少なく,体外衝撃波療法に加えエコーガイド下ニードリングの併用が有用と考えられた.
  • 後藤 英之, 杉本 勝正, 土屋 篤志, 大久保 徳雄, 竹内 聡志, 鷹羽 慶之, 武長 徹也, 吉田 雅人
    2022 年 46 巻 1 号 p. 152-157
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     肩甲胸郭関節の可動性と投球パフォーマンスや肩障害との関係を大学硬式野球部投手20名(平均年齢18.5歳)を対象に調査した.肩甲骨固定の有無による屈曲,水平伸展,水平外旋,水平内旋可動域を測定し,肩甲骨固定での投球側-非投球側の水平内旋可動域差(GIRD)と肩甲骨固定なしでの水平内旋可動域差(SIRD)を上腕骨後捻角差を考慮した上で判定し,これらと最高球速,防御率,投球肩障害の有無との関係を検討した.肩甲骨固定あり・なし両者で投球側水平外旋可動域と球速の間に正の相関を認めた(r = 0.493, r = 0.534).また肩甲骨固定なしでの水平外旋や水平伸展可動域と防御率の間に弱い負の相関を認めた(r =-0.22, r = -0.38). GIRD陽性者10名,SIRD陽性者6名のうち投球肩障害の頻度はともに80%であった.また,GIRD・SIRDともに陽性であった5名の障害の頻度は100%と高率であった.
  • 東田 将幸, 中溝 寛之, 堀江 亮佑
    2022 年 46 巻 1 号 p. 158-161
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術(以下ARCR)後の内服鎮痛剤の違いにおけるCRPS様症状の発生頻度と因子について検討した.2010年1月から2020年4月にARCRを施行された肩腱板断裂836例を対象とし,トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤錠(以下: TRAM)及びプレガバリン(以下PG)の内服を行ったTRAM+PG群と非ステロイド系消炎鎮痛剤(以下NSAIDs)の内服を行ったNSAIDs群の2群間でCRPS様症状の発生頻度について比較検討した.術後CRPS様症状を示したのはTRAM+PG群で3.7%(11/295例),NSAIDs群で9.3%(48/517例)であり,TRAM+PG群でCRPS様症状の発生頻度の有意な減少を認めた(p < 0.05).またTRAM+PG群におけるCRPS様症状の明らかな発症因子は指摘できなかった.本研究ではARCR後のTRAM錠及びPGの投与によりCRPS様症状の発生頻度を低下させる可能性があることを示した.
その他
  • 井上 悟史
    2022 年 46 巻 1 号 p. 162-165
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,リトルリーガーズショルダー(以下LLS)の有無と,保存的治療早期の患者立脚型評価との関係を検討することである.非投球側の上腕骨近位骨端線が開存しており,治療開始約3カ月後にKJOC scoreで評価ができた52例を対象とした.初診時にLLSを認めた30例をL群,認めなかった22例をN群とし,3カ月後のKJOC score,競技復帰の可否,復帰に要した期間を検討した.3カ月後のKJOC scoreはL群89.7 ± 14.5(SD)点,N群86.2 ± 13.4(SD)点であり,両群間の比較では有意差を認めなかった.競技復帰率は両群共に90%以上であったが,復帰に要した期間はL群8.7 ± 5.5(SD)週,N群5.8 ± 3.3(SD)週であり,L群の方がN群よりも有意に長期間であった.LLSの有無は保存的治療早期の患者立脚型評価と関連は無く,概ね競技への復帰は良好である.
治療法
  • 山田 光子
    2022 年 46 巻 1 号 p. 166-169
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     濱田分類Grade2以上の症例に対するリバース型人工関節置換術(RSA)の術後成績を術後2年以上経過した症例で検討した.
     対照は27例30肩,男性19肩,女性11肩,平均年齢75歳,30 肩であった.肩関節自動可動域,日本整形外科学会肩関節疾患治療判定基準(以下JOA score)を術前,術後3か月,最終受診時で評価し,合併症も検討した.屈曲,外転は術後3ヶ月で有意に改善し(p < 0.0001),最終受診時も維持できていた.外旋は最終受診時に有意に改善し(p=0.0108),内旋は術後3ヶ月で有意に低下し(p < 0.0001),最終受診時は術前と同程度になった.JOA scoreは術後3ヶ月で有意に改善し(p < 0.0001),最終受診時さらに改善した(p=0.0057).合併症はベースプレート脱転2肩と腋窩神経麻痺1肩であった.今回の結果から濱田分類Grade2以上に対するRSAは術後2年以後も良好な機能が維持できていることがわかった.
  • 加藤 達雄, 美舩 泰, 乾 淳幸, 向原 伸太郎, 吉川 智也, 篠原 一生, 古川 隆浩, 国分 毅
    2022 年 46 巻 1 号 p. 170-173
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節置換術(RSA)において術後1年の関節可動域に影響する術前因子の検討を行った.RSAを施行した43例43肩を対象とし,術後1年での自動屈曲可動域が120度以上の屈曲良好群と120度未満の屈曲不良群の2群に分け,術前因子として,年齢,性別,自動可動域(屈曲,外転,下垂位外旋),JOAスコア(疼痛,機能,外転筋力),外転筋力(実測値)を評価した.同様に術後1年での自動下垂位外旋可動域が30度以上の外旋良好群と30度未満の外旋不良群の2群に分け,術前因子を評価した.屈曲可動域は術前平均57度から術後1年平均122度と有意な改善を認め,術前外転筋力(MMT)が屈曲良好群で有意に高かった.また,下垂位外旋可動域は術前平均16度から術後1年平均23度と有意な改善を認め,外旋良好群で有意に術前外旋角度が大きかった.RSA術後1年の自動屈曲可動域および自動外旋可動域にはそれぞれ術前の外転筋力,外旋可動域の関与が示唆された.
  • 石垣 範雄, 畑 幸彦, 日野 雅仁
    2022 年 46 巻 1 号 p. 174-177
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     RSA施行後2年時の患者満足度と臨床所見を調査し,術後の高い患者満足度を得るための理学所見の目標値について検討した.RSA施行後2年以上を経過した症例77肩を対象とし,術後2年時の患者満足度が90点以上の良好群46肩と90点未満の不良群31肩の2群に分類した.年齢,性別,使用機種,術後2年の理学所見(関節可動域,徒手筋力),JOAスコアおよび合併症について2群間で比較検討した.術後2年時の屈曲・外転の関節可動域と徒手筋力,C7 thumb distance,JOAスコアの機能と関節可動域の項目において不良群が有意に低値であった.術後2年時に高い患者満足度を得るための理学所見の目標値は屈曲角度が125° ,外転角度が80° ,C7 thumb distanceが35cm,屈曲と外転の徒手筋力が5レベルであった.今後は,これらの目標値を達成するためにimplantの設置や後療法を検討していきたいと考えている.
  • 平岡 祐, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 広沢 直也, 嶋田 洋平, 伊勢 昇平, 稲垣 健太
    2022 年 46 巻 1 号 p. 178-181
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     血清C反応性タンパク質(CRP)は全身性炎症反応の重要なパラメータであり,術後感染症の指標として広く使用されている.人工膝関節置換術(TKA)や人工股関節置換術(THA)の正常経過における術後の血清CRP値に関しての報告は多いが,リバース型人工肩関節置換術(RSA)についての報告は少ない.本研究の目的はRSA術後早期における正常経過の血清CRP値の推移を明らかにすることである.当院で行った初回RSAを施行した242人253肩の術前,術後3,7,14日の血清CRP値を後ろ向きに検討した.血清CRP値はRSA術後3日でピークに達し,その後漸減し,術後14日では正常化する傾向があった.これはTKAやTHAを含む既存の研究と同様の傾向であった.またbody mass index(BMI)> 30kg/m2の肥満がある場合,術後の血清CRP値の改善が遷延したが,年齢,性別,手術時間,出血量,術前診断,腱移行の有無,骨移植の有無には依存しなかった.
  • 松居 祐樹, 瓜田 淳, 門間 太輔, 倉茂 秀星, 岩崎 倫政
    2022 年 46 巻 1 号 p. 182-184
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     近年,リバース型人工肩関節全置換術(RSA)においてInlay型とOnlay型の中間であるSemi-Inlay型RSAが開発され本邦でも使用可能となっている.しかしながら,Semi-Inlay型RSAの臨床成績についての報告は少ない.本研究では腱板断裂性関節症(CTA群)または上腕骨近位端骨折(骨折群)に対してSemi-inlay型RSAを行い術後12ヶ月以上経過観察可能であった18例19肩(CTA群8肩,骨折群11肩)を対象とし,臨床成績,肩関節可動域を調査した.最終観察時,両群ともに良好な臨床成績,肩関節可動域の改善が得られた.CTA群は骨折群よりも屈曲可動域が有意に大きかった(p=0.03).Semi-inlay型RSAはInlay型およびOnlay型と同様に良好な臨床成績となることが示された.上腕骨近位端骨折は術後の挙上が低かったが結節の骨吸収による影響と考えられた.
  • 田村 将希, 前田 卓哉, 井上 駿也, 野口 悠, 阿蘇 卓也, 高橋 知之, 古山 駿平, 尾崎 尚代, 古屋 貫治, 西中 直也
    2022 年 46 巻 1 号 p. 185-189
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     目的は,RTSA症例の挙上動作を鎖骨運動と肩鎖関節運動を含めた計測を行い,術側と非術側を比較することである.
     方法は,術後1年時点での肩下垂位と最大挙上位の単純X線正面像を用いて,挙上動作の解析を行った.計測項目は,両側の鎖骨角,外転角,肩甲骨上方回旋角,肩甲上腕角,肩鎖関節角の計測を行い,挙上位から下垂位の値を引いてそれぞれの変化量を算出した.統計解析にはWilcoxonの順位和検定を用いて,術側と非術側で比較を行った.有意水準は5%未満とした.
     術側で,鎖骨角変化量,肩甲骨上方回旋角変化量,肩鎖関節角変化量が有意に増大し,外転角変化量,肩甲上腕角変化量は有意に減少した.
     RTSA症例の挙上動作では肩甲骨上方回旋の増大だけではなく,鎖骨挙上運動と鎖骨に対する肩甲骨上方回旋運動の増大も特徴の一つと考えられた.
  • 近藤 伸平, 吉村 英哉, 植木 博子, 岩渕 龍彦
    2022 年 46 巻 1 号 p. 190-192
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節置換術(RSA)において,偏心性トレイの外側設置や上腕骨側の頚体角を小さくすることで,肩峰や肩甲骨頚部へのインピンジメントが減少することが知られている.今回我々は,トレイを外側設置し,かつ頚体角を小さくすることで,術後臨床成績や合併症の発生頻度が改善するか検討した.対象は,変形性肩関節症と広範囲腱板断裂にRSAを施行し,平均1年以上経過観察できた症例とした.トレイを内側設置し,頚体角を145度にした22肩を145度内側群,トレイを外側設置し,頚体角を140度にした15肩を140度外側群とした.術後臨床成績は,2群間で有意差は認めなかった.合併症は,145度内側群で3例grade1のscapular notchingと,2例肩峰骨折を認めたが,140度外側群では認めなかった.トレイを外側設置し,かつ頚体角を小さくすることで,合併症の発生が減少する可能性が示唆された.
  • 前田 卓哉, 尾﨑 尚代, 田村 将希, 野口 悠, 阿蘇 卓也, 高橋 知之, 井上 駿也, 古山 駿平, 古屋 貫治, 西中 直也
    2022 年 46 巻 1 号 p. 193-197
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,リバース型人工肩関節置換術(RTSA)後2年時点の肩関節可動域と,異なる2肢位における肩外転筋力の関係性を検証することである.対象は,RTSA後2年経過している25例25肩である.測定項目は,肩関節自動可動域(屈曲・外転・外旋)と肩関節外転筋力であり,外転筋力は上肢下垂位と肩甲骨面上90度挙上位の2肢位(下垂位筋力・挙上位筋力)とした.筋力値と肩関節可動域の相関関係,下垂位筋力と挙上位筋力の相関関係とその差の有無を求めた.結果は,下垂位筋力は挙上位筋力より大きく,2つの筋力に正の相関関係を認めた.また,下垂位筋力・挙上位筋力ともに屈曲・外転可動域との間に正の相関関係を認めた.健常肩の場合,三角筋は屈曲動作に先立って収縮すると報告があり,RTSA症例に関しても下垂位における三角筋の活動が重要であり,肩関節屈曲・外転可動域を獲得するには下垂位と挙上位両方の三角筋筋力を確認することの重要性が示唆された.
  • 吉武 新悟, 中溝 寛之, 堀江 亮佑, 川田 明伸
    2022 年 46 巻 1 号 p. 198-201
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     本研究ではRSAの周術期合併症の有無と術後短期成績について調査した.対象はRSAを施行し術後1年以上経過観察が可能であった44例44肩(男性22肩,女性22肩)で,対象疾患は腱板断裂後変形性関節症24肩,腱板広範囲断裂20肩とした.これらの症例について周術期合併症の有無,自動可動域,JOA スコア,Constant-Murley スコアによる臨床評価と術後画像所見について検討した.術後合併症は皮下血種を1肩,肩峰骨折を3肩,脱臼を2肩に認めた.可動域は屈曲が63.5° から134.8° に,外転が47.2° から116.6° に,外旋が18.4から30.1° に有意に改善した.内旋は術前後ともL4レベルであった.JOA scoreは45.5点から79.8点に,Constant scoreは23.0点から60.6点に改善した.術後画像評価ではScapular notchを11肩(25%),結節部の骨吸収を3肩,ステム周囲のradiolucent lineを1肩に認めた.RSAの術後短期成績はおおむね良好で安定していたが,肩峰骨折や脱臼,Scapular notchなどの合併症が認められたため,慎重に経過観察をしていく必要がある.
  • 植木 博子, 吉村 英哉, 近藤 伸平, 岩渕 龍彦
    2022 年 46 巻 1 号 p. 202-206
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     肩甲下筋腱(SSC)断裂に伴う上腕二頭筋腱長頭(LHB)脱臼に対して固定および切離術が散見されるが,SSCはLHBの安定性を担う重要な役割であること,LHBは上腕骨頭の圧迫に関与し上方制動していることから,SSC断裂の解剖学的修復によりLHBの安定性が再獲得されると考えられる.本研究の目的は,SSC断裂に対する解剖学的修復とそれに伴うLHB温存の臨床成績を検討することである.2014年1月から2018年3月において中大断裂に対し鏡視下腱板修復術を施行し経過観察2年以上経過した症例を対象とした.LHBは腱実質部50%以上の部分損傷又は高度変性,完全断裂は除外した.SSC断裂やLHB病変や不安定性のない腱板断裂群をControl群とし,SSC断裂に対する解剖学的修復とLHB温存した腱板断裂群(SSC群)と比較検討した.結果は,SSC断裂のある腱板断裂症例に対し,SSC断裂を解剖学的修復することでLHBの安定性が得られ,LHB不安定性に関わらず良好な術後成績が得られた.両群間に有意差は認めなかった.
  • 土屋 篤志, 大久保 徳雄, 杉本 勝正, 後藤 英之, 吉田 雅人, 武長 徹也, 鷹羽 慶之, 井上 淳平, 多和田 兼章, 竹内 聡志
    2022 年 46 巻 1 号 p. 207-210
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル 認証あり
     外傷性肩関節前方不安定症のうち再脱臼リスクが高い症例に鏡視下Bankart-Bristow法を施行している.術中後方鏡視で関節面側から関節窩と移植烏口突起の接触状態を確認し必要に応じトリミングを追加してきた.術後CTで内側が接触不良な例を経験し,術中に内側の接触を確認するため烏口突起ポータル鏡視も行い必要ならトリミングすることとした.同手技開始直前の10肩(Before群)と直後からの9肩(After群)の関節窩と烏口突起骨切り面の接触状態を調査した.平均年齢は24.0 ± 10.0歳,男性18例,女性1例.術翌日にCTを撮影,移植烏口突起の骨切り面が撮像されたと判断できた全水平断像で関節窩と烏口突起の接触長(CL)と同じ断面での烏口突起骨切り面全長(LOC)を計測.(CLの和/LOCの和)×100をContact Ratio(CR)として算出.CRはBefore群75.9 ± 13.4%,After群88.7 ± 7.7%で有意差を認めた(p=0.02).烏口突起ポータル鏡視を行い必要に応じトリミングを行い関節窩と烏口突起の良好な接触を得ることができた.
症例報告
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