九州歯科学会雑誌
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第84回九州歯科学会総会・学術大会(2025)シンポジウム:歯科衛生士教員として求められる研究の展望と課題~周術期における研究を通して~
本田 尚郁
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2025 年 79 巻 p. 6

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抄録
近年、歯科衛生士就業状況の傾向として病院等の歯科診療所以外の増加が続いている中 で、令和4年度は歯科衛生士養成機関の増加が顕著であった。そこで、社会的役割の多様 化により歯科衛生士に期待される研究を踏まえ、教育機関に勤務する歯科衛生士として、 私の行った周術期における研究の一例を報告する。  周術期口腔機能管理は、がん治療の支持療法として注目され、国際的に積極的に推進さ れている。手術時の周術期口腔機能管理の目的は、人工呼吸器関連肺炎(VAP)や誤嚥性肺 炎の予防、手術部位感染(SSI)や病巣感染の予防、経口摂取再開の支援、気管挿管に関連 する口腔内トラブルの回避・リスクの軽減である。VAPは集中治療領域における最も頻度 の高い感染症であり、全挿管患者の9~ 27%に発生するとされる。発生の原因は、胃や食 道からの逆流物、副鼻腔炎に由来する細菌や口腔咽頭に存在する原因菌が肺に垂れ込むこ とでVAPが発症すると考えられている。なかでも起炎菌の多くは口腔内細菌由来であるこ とからも、VAP発症予防のためには口腔衛生管理が重要であるとの報告がある。成人にお いては、手術前に口腔内感染の除去に重点を置き、良好な口腔衛生状態を確立することが 重要であるとされている。しかしながら、小児に対する周術期の口腔衛生管理に関する検 討は非常に少なく、私自身も勤務先で対応にあたっていた際に、心臓疾患外科手術を受け る小児に対する口腔衛生管理方法に疑問を感じていた。  そこで、本研究は、心臓血管外科手術前後の乳幼児の唾液中細菌数の変化と関連する因 子、及び消毒作用のある含嗽剤を用いた口腔衛生管理の効果について唾液中細菌数を指標 に検討した。方法は、患児の唾液をスワブで採取し、検体として細菌培養した。その結果、 手術後の唾液中細菌数は手術前よりも減少していた。特に歯が萌出していない乳幼児では、 手術後の唾液中細菌数減少率が高かった。手術後の唾液中細菌数は、「手術時間が長い」、「歯 が萌出している」、「月齢が高い」乳幼児で多かった。口腔衛生管理の方法を検討した結果、 手術後のポビドンヨード含有含嗽剤を用いた清拭は唾液中細菌数を減少させることが示唆 された。  特に学士教育を担う歯科衛生士教員は、学生が卒業後に科学的根拠を持って業務を行う ことが出来る者として期待されることを念頭に置かなければならない。その教育支援のた めには、しっかりした臨床基盤を有した研究を推進できる人材となることが課題であると 認識している。
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