九州歯科学会雑誌
Online ISSN : 1880-8719
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ISSN-L : 0368-6833
79 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 阪口 英夫
    2025 年79 巻 p. 3
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/10/04
    ジャーナル フリー
    いままでの歯科医療では、患者さんが人生の最終段階を迎えた時に、どのように関わる 必要があるのか、あまり考えられてきませんでした。しかし高齢社会が到来し、歯科訪問 診療を中心に、患者さんの人生の最終段階に関わる機会が増えることで、そのような知識 を欲する歯科医師も増えてきました。  一方、1960年代に欧米で盛んにおこなわれるようになった緩和医療は、死生学という学 問分野と関連し、一般的にも知られるほど普及してきました。死生学は古くは江戸時代か ら教育や哲学として日本でも語られてきた学問ですが、その死生学を緩和医療と合わせた 形にすることで普及させたのは、歯科医師であることはあまり知られていません。コロン ビア大学歯学部教授であったAustin H. Kutscherは、Oral medicineの第1人者であったの と同時に、死生学の第1人者でもあったと言われています1)。Austin H. Kutscherは、著 書の中で、当時のアメリカ国内では人生の最終段階にある患者の口腔ケアが普及しておら ず、悲惨な光景を目の当たりにしたことを綴っています。そして口腔ケアの重要性を説き、 歯科医師・歯科衛生士の積極的な参加も呼び掛けています。また、同時に歯科医療関係者 にも死生学的な知識を得ることを勧め、患者の最後まで寄り添える歯科医療の拡充を切望 していました。  Austin H. Kutscherの著書には歯科医師に向けて次のような記述があります。  He must also be made to feel that his obligations do not end when the patient walks from his office but extend, as do the physician's, to the deathbed. 「医師が臨終の場面まで立ち会うように、歯科医師は患者が診療室を出ていったら、それで 終わりということではなく、その責務がそれ以降も続くことを意識しなければなりません。」  今回の特別講演では、Austin H. Kutscherが説いた死生学と歯科との関連を中心に、患 者さんの人生の最終段階における歯科の役割について解説していきたいと思います。
  • 中富 千尋
    2025 年79 巻 p. 4
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/10/04
    ジャーナル フリー
    日本語には、「もちもち」、「カリカリ」、「シャキシャキ」などといった、食品テクスチャー (食感)を表す言葉が豊富に存在し、食感は食品のおいしさを左右する重要な要素である。 また、咀嚼時には歯根膜、舌口蓋粘膜、閉口筋紡錘で食品テクスチャーを感知し、咀嚼力 や咀嚼リズムを調節している。嚥下時には、食塊が嚥下可能なテクスチャーかどうかを判 断することにより、安全な嚥下を可能にしている。このように、食品テクスチャー認知は、 摂食嚥下過程においても重要な役割を担っている。  食品テクスチャー研究は、これまで主に機器を用いた物性測定や、ヒト被験者を対象と した官能試験を中心に行われてきた。一方で、口腔内における食品テクスチャー刺激の受 容メカニズムや、認知に関する神経回路など、生理的なメカニズムはほとんど研究されて いない。口腔粘膜や歯根膜には多くの機械受容器が存在すると報告されているが、どの受 容器がどの食品テクスチャー刺激の受容に関与しているのかは未解明のままである。食感 認知研究が進まない要因として、動物実験系を用いた食感認知の評価が困難であることが 考えられる。過去に齧歯類が食品にテクスチャーを付与する添加物の味を認知していると いう報告があり、食感認知と味認知を切り分けて評価するのが難しいためである。  そこで演者はこれまで、味認知の影響を排除した条件下でラットを用い、食品テクス チャー認知評価系の確立に取り組んできた。嫌悪条件付け学習試験を用いた実験により、 ラットが3.6mPa・s(ウスターソースと同等)の低粘度を認知すること、さらに寒天ゲルの 弾力性や硬さテクスチャーを識別できることを明らかにした。加えて、嗜好条件付け学習 試験を用いることにより、ラットが直径およそ1.5μmの微細セルロース粒子の存在を認知 していることが示された。  これらの実験系では、ラットにおける食品テクスチャー認知を精度よく、客観的に評価 できる。今後は、遺伝子改変動物への応用や、テクスチャー認知に関与する神経核の抑制 試験などと組み合わせることで、分子・細胞レベルにおける食感認知研究をさらに推進で きるだろう。詳細なメカニズムを解明することで、摂食嚥下機能全体におけるテクスチャー 認知の役割をより明らかにすることが期待される。本シンポジウムでは、これまでに行っ た一連の食感認知研究の成果を紹介する。
  • 鬼塚 理
    2025 年79 巻 p. 5
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/10/04
    ジャーナル フリー
    一度失われた組織を修復、さらには再生することが可能となれば、あらゆる疾患の問題 を解決することができるため、我々医療に携わるものにとって再生療法は患者のニーズに 応える最善の治療法ではないだろうか。歯科における再生療法としては自家骨移植が古く から行われており、今現在も骨の再生を考慮した際のゴールドスタンダードと考えられて いる。1980年代になり、遮蔽膜を用いたGTR法が登場し、その他にもハイドロキシアパタ イトなどの人工骨を用いた骨補填材による骨造成、さらにはエナメルマトリックスタンパ クやFGF-2等の特定のタンパクを用いた歯周組織再生療法など、これまで数多くの再生療 法が考案されている。また、これらの骨補填材やタンパク製剤を併用した再生療法により 良好な臨床成績を収めており、現在では治療を考慮する際の第一選択であるともいえる。 しかしながら、既存の治療では改善困難な広範な組織欠損、いわゆるアンメットメディカ ルニーズに対する絶対的な治療法は未だ確立するに至ってないのも事実である。  1993年にLanger & Vacantiにより提唱された組織工学の概念では、細胞・足場・成長因 子の3要素が組織の構築に必要不可欠であることが示されている。自家骨移植を除く上記 の再生療法は、宿主に存在する健全で未分化な細胞に働きかけるのみであり、重要な因子 である細胞を用いることが次世代の再生療法の鍵となる。こうして、再生療法の研究フィー ルドは細胞治療へと移り変わっており、数多の研究者が様々な種類の細胞を用いて基礎的 研究を行い、臨床応用を目指すべく研究開発に着手した。特に歯周組織再生療法では体性 幹細胞(人体のあらゆる組織に存在しており、限定した分化能を持ち、かつ造腫瘍性のリ スクが極めて低いといった細胞)に分類される間葉系幹細胞(MSCs)が注目されており、現 在では実用可能な再生医療等製品も開発されている。このような細胞を用いた治療法は、 これまでよりもさらに良好な成績が期待でき、今後も加速度的に再生療法研究は発展して いくと考えられる。その一方で、いまだどのような症例にも対応し得る万能な再生療法も 確立されておらず、まだまだ課題は多いとも言える。  本シンポジウムでは歯科における再生療法の変遷と、口腔疾患を対象とした細胞治療の 主役となるMSCsの基礎、および臨床研究の実態、さらには再生療法の今後の展望や課題 などについて解説したい。
  • 本田 尚郁
    2025 年79 巻 p. 6
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/10/04
    ジャーナル フリー
    近年、歯科衛生士就業状況の傾向として病院等の歯科診療所以外の増加が続いている中 で、令和4年度は歯科衛生士養成機関の増加が顕著であった。そこで、社会的役割の多様 化により歯科衛生士に期待される研究を踏まえ、教育機関に勤務する歯科衛生士として、 私の行った周術期における研究の一例を報告する。  周術期口腔機能管理は、がん治療の支持療法として注目され、国際的に積極的に推進さ れている。手術時の周術期口腔機能管理の目的は、人工呼吸器関連肺炎(VAP)や誤嚥性肺 炎の予防、手術部位感染(SSI)や病巣感染の予防、経口摂取再開の支援、気管挿管に関連 する口腔内トラブルの回避・リスクの軽減である。VAPは集中治療領域における最も頻度 の高い感染症であり、全挿管患者の9~ 27%に発生するとされる。発生の原因は、胃や食 道からの逆流物、副鼻腔炎に由来する細菌や口腔咽頭に存在する原因菌が肺に垂れ込むこ とでVAPが発症すると考えられている。なかでも起炎菌の多くは口腔内細菌由来であるこ とからも、VAP発症予防のためには口腔衛生管理が重要であるとの報告がある。成人にお いては、手術前に口腔内感染の除去に重点を置き、良好な口腔衛生状態を確立することが 重要であるとされている。しかしながら、小児に対する周術期の口腔衛生管理に関する検 討は非常に少なく、私自身も勤務先で対応にあたっていた際に、心臓疾患外科手術を受け る小児に対する口腔衛生管理方法に疑問を感じていた。  そこで、本研究は、心臓血管外科手術前後の乳幼児の唾液中細菌数の変化と関連する因 子、及び消毒作用のある含嗽剤を用いた口腔衛生管理の効果について唾液中細菌数を指標 に検討した。方法は、患児の唾液をスワブで採取し、検体として細菌培養した。その結果、 手術後の唾液中細菌数は手術前よりも減少していた。特に歯が萌出していない乳幼児では、 手術後の唾液中細菌数減少率が高かった。手術後の唾液中細菌数は、「手術時間が長い」、「歯 が萌出している」、「月齢が高い」乳幼児で多かった。口腔衛生管理の方法を検討した結果、 手術後のポビドンヨード含有含嗽剤を用いた清拭は唾液中細菌数を減少させることが示唆 された。  特に学士教育を担う歯科衛生士教員は、学生が卒業後に科学的根拠を持って業務を行う ことが出来る者として期待されることを念頭に置かなければならない。その教育支援のた めには、しっかりした臨床基盤を有した研究を推進できる人材となることが課題であると 認識している。
  • 2025 年79 巻 p. 7-11
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/10/04
    ジャーナル フリー
  • 2025 年79 巻 p. 12-19
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/10/04
    ジャーナル フリー
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