経済研究
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Print ISSN : 0022-9733
研究ノート
予想に働きかける政策をゲーム理論で考える
宇井 貴志
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2023 年 74 巻 1.2 号 p. 1-12

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抄録

2013年以来,日本銀行は人々のインフレ予想に働きかけて2%のインフレ率を実現しようとしてきたが,予想への働きかけは失敗した.本稿ではゲーム理論の視点から「なぜインフレ予想の操作は難しいのか」という問題について考える.予想インフレ率が長期間安定しているとき,その予想インフレ率は共有知識となり,分析哲学者デイヴィッド・ルイスの意味での慣習として定着する.このときインフレ予想を操作するには,一人ひとりのインフレ予想だけでなく,その共有知識の操作が必要になる.共有知識の操作に成功した例として,1994年にブラジルで実施されたレアル計画について検討する.また,共有知識の操作とナラティブ経済学の関係について論じる.

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© 2023 国立大学法人 一橋大学経済研究所

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