2025 年 76 巻 1 号 p. 1-24
販売,配送,メンテナンス,修理などの生産後サービスを自社のみで行うのか,他社にも行うことができるようにするのか,あるいは他社にアウトソースして自社では行わないのか.これは全ての最終材生産企業が行うべき重要な戦略的意思決定であり,その意思決定が消費者,さらには社会に与える影響は,競争政策上重要な意味を持つ.本稿では,この問題について筆者らが行ってきた理論分析,すなわち,多くの耐久財にとって重要な生産後サービスの一つであるメンテナンスに焦点をあてて分析するMorita and Waldman (2004, 2010)と,生産後サービスのアウトソーシングを国際貿易の文脈で分析するIshikawa, Morita, and Mukunoki (2010, 2016)の理論分析を総括し,競争政策への含意を議論する.