2024 年 2 巻 p. 130-145
戦後の日本には約10,000館の映画館が存在した。映画を主題とする書籍・雑誌などは豊富にあり、また学術的にも様々な切り口から研究がなされているが、上映施設である映画館についての研究は蓄積が乏しく、大都市以外の映画館は基本的な情報すら失われた状態である。本稿は、最初に各年版の「映画館名簿」から基本的な情報を抽出した上で、700館以上の公共図書館が所蔵する郷土資料から収集した、映画館に関する情報を網羅的に蓄積するデータベースサイト「消えた映画館の記憶」を作成した際にとった調査方法を提示する。データベースはオープンなライセンスで公開しており、学術研究への第一歩となりうると考える。次に、本データベースの活用の一例として、愛知県における映画館の跡地、東海・北陸甲信越・近畿地方における映画館建築の現存例について紹介するほか、映画館のWikipedia記事の作成などのアーカイブ活動についても述べる。