The KeMCo Review
Online ISSN : 2758-7452
Print ISSN : 2758-7444
最新号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
目次・巻頭言
  • 2024 年 2 巻 p. 3-4
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
  • 池谷 のぞみ
    2024 年 2 巻 p. 5-6
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    『The KeMCo Review』 の第2号をお届けします。「特集」の論文3件と研究ノート3件、そして「一般」の論文1件と研究ノート3件で構成されています。いずれも厳正な査読プロセスを経て掲載されるに至ったものです。 今号の特集テーマは、「パブリック・ヒューマニティーズ」です。デジタル・ヒューマニティーズの動きに連動しながら、歴史学における専門知を問い直す試みや、デジタルデータを社会に開いていく試み、デジタルアーカイブをデザイン研究と組み合わせて展開する試みなど、広い意味での人文学領域における議論や実践が展開しつつあります。今号では、「パブリック・ヒューマニティーズ」を、広義には学術研究の世界を「パブリック」に開きながら「パブリック」の営みとも関係を持っていくことに関わる議論や実践、と位置づけて特集テーマとし、原稿を募集しました。 慶應義塾ミュージアムコモンズ(KeMCo)は、文化資源を媒介として集まる多様な人々―多様な学問分野の研究者やアーティスト、キュレーター、一般の方々―が垣根を超えて交流できる「空き地」をコンセプトとしております。『The KeMCo Review』の第2号を、KeMCoのコンセプトを体現する内容でお届けできることを嬉しく思っております。 『The KeMCo Review』では、KeMCoの関心事を知っていただくために、毎号特集テーマを設定します。次号についても、まもなく検討を始め、投稿の呼びかけをする予定です。他方、そうしたテーマに縛られない自由投稿もいつでも受け付けています。投稿に関するガイドラインは投稿規程に定めていて、学術論文のみならずより短めの研究ノートも掲載します。いずれも原則として2名の査読者による査読と編集委員会での検討をへて掲載可否の決定が行なわれます。 今号の読者におかれましては、次号への投稿をぜひご検討ください。
特集論文
  • 笠井 賢紀
    2024 年 2 巻 p. 10-28
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿は、パブリック・ヒューマニティーズが、民俗や人びとの生活にどのような新たな解釈を与えることができるかを、2つの実践例の紹介を通して明らかにする。第一に、左義長の事例は歳神を天上に返すという物語に沿うだけでなく、社会的紐帯を強める機能を有していた。第二に、伊勢講は伊勢参拝を叶えるだけでなく、共同生活の基盤としても機能していた。これらはいずれも住民やNPOとの共同調査によって明らかになった。

    パブリック・ヒューマニティーズは、人びとと協働して、社会集団の機能や当事者も気づいていないことがらを明らかにすることに寄与しうる。特に、共生のレパートリーともいえるようなコミュニティ生活の根幹にかかわる民俗の分析は、普遍的なテーマへの問いを与えることが明らかにされた。

  • 宮北 剛己
    2024 年 2 巻 p. 30-45
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、東京にある大学美術館:慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)において、学生中心型アプローチを用いてデジタル・パブリック・ヒューマニティーズを実践した過程および結果を記す。具体的には、KeMCoMプロジェクトで展開しているデジタル・エンゲージメントや展覧会のデザイン、ワークショップのファシリテーション活動をはじめ、詳細なケース・スタディを通じて学生中心型アプローチの有用性について議論し、パブリック・エンゲージメントを推進するうえで、学生が重要な役割を果たすことを示していく。本研究は、KeMCoの立ち上げから2年半(2021-2023年度上半期)にわたる実践・経験に焦点を当て、多様なステークホルダー(実践者や参加者)の知見も交えて考察を重ねていくことで、学生と協働して大学美術館をデザインすることの重要性を提起し、これからの時代における大学美術館の在り方を展望する。
  • 鳥谷 真佐子, 阿児 雄之, 野口 淳
    2024 年 2 巻 p. 48-62
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    博物館の評価は、来館者数、博物館活動の質、経営効率などに焦点が当てられてきた。しかし、各博物館はそれぞれ独自のミッションを持っており、来館者,地域住民,自治体などのステークホルダーからの要求もさまざまである。従って、各博物館の価値は、それぞれのミッションや博物館を取り巻く環境を考慮した上で、独自の評価項目により評価されなければならない。われわれは、文化、教育、学術、経済など多角的に各博物館の価値を測定するために、システムズエンジニアリングのアプローチを用いた評価フレームワー クの開発を試み、ステークホルダー、ミッション、活動の関係性を構造的に示した。中小の博物館4館の協力を得て、フレームワークの有効性を検証した結果、博物館のミッションや価値を考慮し、定性的・定量的な評価項目を新規かつ効率的に開発できることがわかった。また、博物館の存在意義についての議論や再考を参加者らに促す効果も認められた。
特集研究ノート
  • 野口 淳, 高田 祐一, 三好 清超, 佐々木 宏展
    2024 年 2 巻 p. 64-75
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    計測技術・機器の発展と普及により、考古学・博物館 資料の3Dデータ化が進んでいる。本来、立体的な形状を有する資料を、従来の実測図や写真よりも直感的に理解しやすく、ウェブ、AR・VR技術との親和性が高いため、資料の記録・アーカイブスだけでなく教育普及における応用例も増えている。筆者らは、博物館における市民参加の3D計測ワークショップから、学校教育現場におけるオープン化したデータの利用まで実践を重ねることで、最新の技術を用いてデータ生成から公開、利用にいたるサイクルの全体を、アカデミアとパブリックの区別なく協働し、または並行して推進でき ることを確認した。一方、考古学・博物館資料については、体系的な資料識別IDの未整備により、分野外からの参照・利用が困難な状況がある。そこでデジタルアーカイブ化が進む発掘調査報告書の書誌情報をキーとしてレファレンス可能性を高め、協働サイクルの促進を提案する。
  • 岩浪 雛子, 畑中 乃咲佳, 山口 舞桜
    2024 年 2 巻 p. 78-93
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、2023年春に慶應義塾ミュージアム・コモンズで開催した展覧会『構築される「遺跡」:KeMCo建設で発掘したもの・しなかったもの』における取り組みを振り返るものである。本展は、KeMCoの活動拠点である三田キャンパス東別館を建設するにあたって実施された発掘調査の成果を紹介することを目的に企画された。しかし、展示準備を進める中で、ただ成果を紹介する一般的な展示とは一線を画し、発掘主体が選択した「発掘したもの」(出土資料・調査記録)のみで展示を構成するのではなく、様々な事情によって調査対象にならなかった「発掘しなかったもの」に敢えて目を向けることにした。また、来館者との双方向的な意見交換を目指した幾つかの仕掛けの導入も試みることにした。本稿では、これら取り組みについて、実践を通じて生じた具体的な出来事や発見、反省点や課題も織り交ぜながらまとめていく。最後に、パブリックと歴史学という視点から本展の総括を行う。
  • 本間 友
    2024 年 2 巻 p. 96-108
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    慶應義塾ミュージアム・コモンズでは、大学のコレクションに対する人々のエンゲージメントを多様化するこ とを目的として、来場者や大学を取り巻くコミュニティのさまざまな関わりを招く参加型展覧会の設計と実践 を行っている。 本研究ノートでは、ミュージアムと参加に関する議論、 シチズン・サイエンスやパブリック・ヒューマニティーズ をめぐる国内における課題を参照しつつ、2023年3月の展覧会「構築される『遺跡』」展における参加のありかたを分析する。そして、多様な参加のモダリティを可視化しえる展覧会が、文化・学術活動への参加を多くの人に開いていくための有効な場として機能することを述べる。
一般論文
  • 松谷 芙美
    2024 年 2 巻 p. 112-128
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    江戸時代前期より、雪舟に対する評価は確固たるものとなり、近代には「画聖」としてのイメージが定着した。しかし近年、そのような固定観念に捉われず、雪舟の真の姿を追う研究姿勢が提唱され、新出作品も紹介されている。東福寺の了庵桂悟が雪舟の山水図の賛(藤田美術館所蔵)に、「画を論じること猶、詩句を論ずるが如く」と寄せたように、雪舟は日々絵に画僧としての心情を託し、求めに応じて、描き与えたのではないか。例えば、一気呵成に短時間で仕上げた絵として、潑墨山水図があげられる。慶應義塾が所蔵する「山水図」は、潑墨技法で描かれた小品で、短時間で生み出されたものと推測される。潑墨技法はその自由さゆえ、筆順や描き方のルールはないが、現代の美術家の助言をもとに、その成り立ちを検討することで、抽象性の高さゆえ、比較が難しい、潑墨技法の様式比較を試みる。
研究ノート
  • 澤田 佳佑
    2024 年 2 巻 p. 130-145
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    戦後の日本には約10,000館の映画館が存在した。映画を主題とする書籍・雑誌などは豊富にあり、また学術的にも様々な切り口から研究がなされているが、上映施設である映画館についての研究は蓄積が乏しく、大都市以外の映画館は基本的な情報すら失われた状態である。本稿は、最初に各年版の「映画館名簿」から基本的な情報を抽出した上で、700館以上の公共図書館が所蔵する郷土資料から収集した、映画館に関する情報を網羅的に蓄積するデータベースサイト「消えた映画館の記憶」を作成した際にとった調査方法を提示する。データベースはオープンなライセンスで公開しており、学術研究への第一歩となりうると考える。次に、本データベースの活用の一例として、愛知県における映画館の跡地、東海・北陸甲信越・近畿地方における映画館建築の現存例について紹介するほか、映画館のWikipedia記事の作成などのアーカイブ活動についても述べる。
  • 長谷川 紫穂
    2024 年 2 巻 p. 148-160
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    2023年夏、アーティストの三原聡一郎によるコンポスト装置がKeMCo館内に現れた。有機的循環にアプローチする三原の作品や思考は、慶應義塾中等部とKeMCoで進行中のSDGsプロジェクトで共有され展開し、その一環として「土をつくる」ことをはじめるに至った。近年、ごみの削減や資源の循環といった持続型社会への課題から家庭でできる取り組みとしてコンポスティングは広がりをみせる。また、新型コロナウイルス下の経験により、目に見えない存在による目に見えるインパクトやサイクルへの関心が強まり、微生物の分解による堆肥化や発酵の文化へ目を向ける動向は、アートをはじめとしたカルチャーの文脈で顕著である。本稿では、土にまつわる近年の作品やアート・アクティヴィティについて記し、「土」との(創造的)関係を結ぶ上でのプレサーベイとしてKeMCoでのコンポスト過程を報告する。
  • 荒屋鋪 透
    2024 年 2 巻 p. 162-177
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    高原のサナトリウムを舞台に、婚約者の近い死をまえにした主人公の心理を、緊張感ある文体と静謐な自然描写にたくした作家、堀辰雄の小説『風立ちぬ』は、2冊の美しい限定本が残されている。戦前の野田書房版(1938年)と第2次世界大戦終結の4年後、物資の乏しいなか上梓された細川書店版(1949年)である。まったく挿絵のない野田版に対して、細川版には15年間、フランス留学した洋画家、岡鹿之助の5点の挿絵がそえられた。その挿絵は登場人物や場面の情景描写ではなく、小説の5章からつたわる雰囲気を草花や蝶にたくした特異な絵画であった。ジロットNo.291という英国製の極細ペンで描かれた細密画は、その後の岡を、堀の文学世界のエンブレム(絵画的イメージ)を描く代表的画家にしていく。本稿では細川版『風立ちぬ』の挿絵制作を端緒にした画家と文学者の交流を、そのなかで書かれた1枚の堀の岡宛絵はがき(新資料)の文面を軸に紹介する。
投稿規定・執筆要領・奥付
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