本稿は、パブリック・ヒューマニティーズが、民俗や人びとの生活にどのような新たな解釈を与えることができるかを、2つの実践例の紹介を通して明らかにする。第一に、左義長の事例は歳神を天上に返すという物語に沿うだけでなく、社会的紐帯を強める機能を有していた。第二に、伊勢講は伊勢参拝を叶えるだけでなく、共同生活の基盤としても機能していた。これらはいずれも住民やNPOとの共同調査によって明らかになった。
パブリック・ヒューマニティーズは、人びとと協働して、社会集団の機能や当事者も気づいていないことがらを明らかにすることに寄与しうる。特に、共生のレパートリーともいえるようなコミュニティ生活の根幹にかかわる民俗の分析は、普遍的なテーマへの問いを与えることが明らかにされた。
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