抄録
1969-70年は作家が直接コミットした現況展が行われるようになった、現代美術展の転換点であるが、その一連の展覧会の中に位置づけられる第10回日本国際美術展(=東京ビエンナーレ1970、東京都美術館、1970年)のカタログについて、分析・考察し、その意義について検討する。同展のカタログは2分冊から成っており、本編では出品作家が自由に用いるページが提供されると同時に作品リストは掲載されず、会期後に制作された別冊に出品リストと展示写真を掲載している。これは1960年代末から顕著となった雑誌誌面や印刷物を美術表現の場と考える流れを背景としつつ、カタログという印刷物が現代美術展においてどのような意味をもち、役割を果たすかという点に自覚的に取り組んだ例となっている。それは、カタログを表現媒体かつ記録媒体として機能させる試みであった。