2024 年 59 巻 2 号 p. 74-81
電子エネルギー損失分光の吸収端微細構造(ELNES)は物質中の電子状態の情報を豊富に含み,透過型電子顕微鏡の高い空間分解能を活かして取得できる.ELNESはその場観察やスペクトラムイメージングなどによる大量かつ高次元なデータ取得が可能となるのに伴って様々な活用が期待される一方,その解釈は主に参照スペクトルとの比較に依存しており,実験・計算による参照スペクトルの高い入手コストや定量的な解析の難しさがELNESの活用を制限している.これらの課題を克服し,高速かつ定量的な解釈を可能にするには,スペクトルの第一原理計算,データベースの構築,機械学習によるスペクトル予測や情報抽出が有効である.本稿では,ELNESの活用に向けた機械学習の基盤となるスペクトル計算から始め,ELNESに対する機械学習の適用例と将来展望を著者らが行った計算スペクトルを対象とした試みを中心に解説する.